文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ジェイン・オースティン『マンスフィールド・パーク』

ジェイン・オースティン 中野康司訳

マンスフィールド・パーク』 ちくま文庫

 

ジェイン・オースティン(1775-1817)の『マンスフィールド・パーク』を読了しました。19世紀初めに活躍し近代イギリス小説のひとつのピークをなしたオースティンの作品群について、学生時代に読んだことがあるのが『高慢と偏見』、『エマ』、そして『説きふせられて』(いずれも岩波文庫の翻訳)であったと記憶していますが、本書『マンスフィールド・パーク』を読むのは初めてのことです。最近、岩波文庫でも翻訳が出版されていたように思いますが、今回はちくま文庫の翻訳で読み進めます。

 

オースティンの作品は、本書の訳者あとがきでも指摘されていますが、粗筋を聞いてもまったく面白そうには思えないのに、実際に読んでみるとめっぽう面白いというのが特徴のひとつだと思います。本書もその例に違わず、文庫本にして700ページを超える分厚さですが、最初から最後まで飽きることなく読み進めることとなりました。個人的には、オースティンの小説の面白さやユーモアのノリはNHKの朝ドラ(最近はほとんど見ていないですが)に通ずるものがあるのではないかと思っているのですが、どうでしょうか。

 

最近はあまり読書の時間を取れていないのですが、内気で虚弱ながらも道徳と分別を備えた地味な主人公ファニーを軸にして、ノーサンプトンマンスフィールド・パークを舞台に展開されれる群像劇は、ゆっくりと読み進めるのが相応しいと感じます。訳文も大変読みやすく、これを機に既読の作品も含めて、ちくま文庫に収められたオースティンの作品を順次読んでいきたいと思います。

 

【満足度】★★★★★