文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

モーシン・ハミッド『コウモリの見た夢』

モーシン・ハミッド 川上純子訳

『コウモリの見た夢』 ランダムハウスジャパン

 

モーシン・ハミッド(1971-)の『コウモリの見た夢』を読了しました。作者の小説を読むのは本書で二冊目となります(現状、翻訳が出版されているのが二冊)。ブッカー賞最終候補作となった本書は作者の第二作目の長編作品で、本書の帯では「パキスタン人の作家が描く、『グレートギャツビー』と『ノルウェイの森』の世界。そして、9.11後のアメリカ」とのコピーが添えられていますが、まあこうしたコピーを付けたくなる気持ちは分かるような気がします。

 

本書の原題は“The Reluctant Fundamentalist”で、直訳すると「気乗りしない原理主義者」となりますが、訳者あとがきによると、このFundamentalistという言葉には、著者が生業としていたコンサルタント業界の用語でもあるようです。物語全体を包んでいる不穏な空気と、主人公の独白が向けられた相手の正体を巡るサスペンスは、小説の方向性を少し捻じれさせてしまっているようにも感じられたのですが、全体として面白く読むことができました。

 

【満足度】★★★★☆