文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

タチアナ・ド・ロネ『サラの鍵』

タチアナ・ド・ロネ 高見浩訳

『サラの鍵』 新潮社

 

タチアナ・ド・ロネ(1961-)の『サラの鍵』を読了しました。本書カバーに記されたプロフィールによると、作者はパリ郊外で生まれパリとボストンで育ち、イギリスのイースト・アングリア大学で英文学を学んだ後、パリに戻って企業広報や雑誌の特派員を経て作家になったとのこと。本書では、フランス人と結婚してパリに暮らすアメリカ人ジャーナリストを主人公として、第二次世界大戦中のフランスの「汚点」であるヴェルディヴ事件を主題に、過去と現在が交錯する物語が描かれています。

 

少女サラの視点を通して描かれる1942年のパリで行われたフランス警察によるユダヤ人の大量検挙事件と、現代のパリで生活するジャーナリストであるジュリアの運命とが重なり合う場面は物語のハイライトなのですが、それは物語の中盤に過ぎず、その後に描かれるサラの歴史を辿る旅もまた読ませる構成になっています。

 

【満足度】★★★☆☆