文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ヴォルテール『カンディード 他五篇』

ヴォルテール 植田祐次

カンディード 他五篇』 岩波文庫

 

ヴォルテール(1694-1778)の『カンディード 他五篇』を読了しました。「コント」というのは、もともとフランス語で短い寸劇のことを意味するそうですが、本書にはヴォルテールの代表的なコントのうち五作品が収録されています。もっとも短い寸劇というには長すぎる作品(長めの短編小説もしくは短めの中編小説くらいの長さ)もあって、「ザディーグまたは運命」や表題作となっている「カンディード」がそれに当たります。

 

カンディードまたは最善説」はタイトルの後半でも示されているように、哲学者ライプニッツ(1646-1716)が主張したとされる「オプティミスム」をテーマとしていて、運命に翻弄されて過酷な生涯を送る主人公カンディードの地獄巡りを通して、ライプニッツの「主張」する充足理由率を風刺的に取り扱った作品と言われています。ライプニッツに与する人たちがその批判の浅薄さを指摘する一方で、本書の訳者はライプニッツ哲学の風刺という側面ばかりが取り上げられてしまう本書に対する批評的態度に疑問を唱えています。

 

単純に楽しく読むことができる作品集で、冒頭に置かれた「ミクロメガス」のSF的な作風など、驚かされる部分もたくさんありました。

 

【満足度】★★★