文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ゲーテ『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』

ゲーテ 山崎章甫訳

『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』 岩波文庫

 

ゲーテ(1749-1832)の『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』を読了しました。ドイツの教養小説(Bildungsroman)の古典作品として知られる本書ですが、これまでは手に取る機会がなく、今回が初めての読書となります。かなり昔には「ヴィルヘルム・マイスターの徒弟時代」と訳されていたような気がするのですが、主人公の名前に含まれる「マイスター」の現代的意味と相まって、漠然とものづくりの職人世界を舞台にした作品を思い描いていたのですが、恥ずかしながらそれはまったくの勘違いでした。本書において主人公のヴィルヘルムは演劇の世界に身を置きながら、数々の人生経験を積んでいくことになります。

 

こちらの方が先に読了しているのですが、ヘッセの著した『ガラス球遊戯』などの作品の中に、本書の与えた影響を見て取ることができるように思います。読者に鮮やかな印象を残す少女ミニヨンの造形をはじめとして、多くの人がこの作品に惹かれるということがよく理解できる優れた古典作品です。

 

【満足度】★★★