石持浅海の『アイルランドの薔薇』を読了しました。不思議な設定のクローズド・サークルを生み出すことに定評のある作者の長編第一作目にあたるのが本書です。かなり久しぶりに読み返すこととなりました。北アイルランド問題というなかなかにセンシティブな話題を取り扱いながら、そのテーマが本書のプロットにうまく組み込まれているかどうかについては、やや疑問が残ります。やたらと超人的に描かれる探偵役の人物についても、作者の他の作品を読んでみると、これもひとつの味になっているのかなと思わされるのですが、本書を単独で読む分には少し鼻白んでしまうところもあるのでした。本格ミステリ好きにとっては許せてしまう点なのかもしれませんが。
【満足度】★★★☆☆