文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

フランシス・フクヤマ『歴史の終わり』

フランシス・フクヤマ 渡部昇一

『歴史の終わり』 三笠書房

 

フランシス・フクヤマの『歴史の終わり』を読了しました。ふとしたきっかけもあって、政治学歴史学の範疇に入るであろう本書を手にとって読むこととなりました。20世紀においてヘーゲルの思想に多大な共感を覚えながら「歴史の終焉」について語る本書ですが、最後まで私には本書が主題としているものが何であるのかをうまく読み取ることができませんでした。

 

リベラルな民主主義というものに潜む様々な陰影であったり、バリエーションを説明するための概念として、ヘーゲルの「承認」やプラトンの「気概」といったものが持ち出されているようですが、それが「普遍的な歴史」の考察たりえているのかどうかについては私には判断がつきません。本書の内容については、刊行から数十年が経過した21世紀の現在の地点から見るとその長所も短所もある程度客観的に見て取ることができるようになっていると思うのですが、それでもその個別的な観点というよりは本書の主題自体にうまく馴染めなかったというのが、その大きな理由であろうと思います。

 

【満足度】★★