ホセ・ドノソ 寺尾隆吉訳
『別荘』 現代企画室
ホセ・ドノソ(1924-1996)の『別荘』を読了しました。チリの作家でラテンアメリカ作家による「ブーム」の名付け親(?)ともいえるドノソの作品を読むのは、『夜のみだらな鳥』に続いて本書が二作品目ということになります。
奇妙な理由のもとで揃ってハイキングに出かけた大人たちの思惑、別荘に残されたベントゥーラ一族の数十人の子どもたちが繰り広げる群像劇、原住民や謎の綿毛の存在などの想像力に満ちたガジェットが組み合わされて展開される物語に、時折作者自身の語りが顔を出すポスト・モダン的な構成も相まって、それなりに面白く読むことはできたのですが、読書に没入させられるというところまでは至らず、これは作家と読者との間に横たわる理屈を超えた相性のようなものがその原因なのではないかとも思います。
【満足度】★★★☆☆