文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ライマン・フランク・ボーム『オズの魔法使い』

ライマン・フランク・ボーム 河野万里子訳 にしざかひろみ絵

オズの魔法使い』 新潮文庫

 

ライマン・フランク・ボーム(1856-1919)の『オズの魔法使い』を読了。本書も『ピーター・パンの冒険』などの作品と同様に、新潮文庫の新訳がなければ手に取ることはなかったかもしれません。子どもの頃にNHKの番組だったか演劇だったかで見て、物語の粗筋は知っているのですが、原作をきちんと読むのは初めてのことでした。

 

竜巻によって故郷を遠く離れた国へ迷いこんでしまった少女ドロシーは、その国に住むという大魔法使いオズの力によって自分の故郷に帰してもらうべく旅を始めます。その旅の途中で、脳みそのないかかし、心をなくしたブリキのきこり、臆病なライオンらと出会い、友情を育みながら魔法使いオズのもとにたどり着くと…というストーリー。

 

年を取って涙腺がもろくなってしまったなと感じてしまうわけですが、自らの危険を顧みずに臆病なライオンが勇気を振り絞って襲い来る敵に立ち向かう姿を前にすると思わず感動して目頭が熱くなってしまいます。自らの身を挺して仲間を守ろうとするかかしや、仲間のことを思って涙を流してすぐに錆びついてしまうブリキの姿も同様です。

 

良質な児童文学で子どもに読ませたいと感じるわけですが、自分自身のことを振り返ってみると、おそらく子どもが面白がるのは、かかしとブリキとライオンが仲間だという奇想天外な設定の方なのでしょう。しかしそれだからこそ、本書は本当によくできた作品であり、これからもずっと読み継がれる価値を持つ作品になっているのだと思います。

 

【満足度】★★★☆☆