文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

2019-01-01から1年間の記事一覧

ボッカッチョ『デカメロン』

ボッカッチョ 平川祐弘訳 『デカメロン』 河出文庫 ボッカッチョ(1313-1375)の『デカメロン』を読了しました。『千一夜物語』の影響を受け、そして後世の『カンタベリー物語』に影響を及ぼしたと言われる作品で、ルネサンス文学の先駆けであるダンテの『神…

ローレン・グロフ『運命と復讐』

ローレン・グロフ 光野多恵子訳 『運命と復讐』 新潮社 ローレン・グロフ(1978-)の『運命と復讐』を読了しました。ニューヨーク生まれの作家というグロフの三番目の長編作品である本書は、全米図書賞、そして全米批評家協会賞の候補となった話題作です。 …

ベルンハルト・シュリンク『朗読者』

ベルンハルト・シュリンク 松永美穂訳 『朗読者』 新潮文庫 ベルンハルト・シュリンク(1944-)の『朗読者』を読了しました。最初に本書を読んだのは新潮クレストブックスから刊行された2000年のことなので、およそ19年ぶりの読書ということになりました。当…

柴田元幸『ケンブリッジ・サーカス』

柴田元幸 『ケンブリッジ・サーカス』 新潮文庫 柴田元幸の『ケンブリッジ・サーカス』を読了しました。英文学者・翻訳家として知られる柴田氏の若き日の姿などをうかがい知ることができるエッセイ・紀行・自伝的短編小説。少し中途半端な編集の本であると感…

『カート・ヴォネガット全短編 1 バターより銃』

大森望 監修・浅倉久志 他 訳 『カート・ヴォネガット全短編 1 バターより銃』 早川書房 『カート・ヴォネガット全短編 1 バターより銃』を読了しました。SF作家というジャンルの枠組みを超えて(もはやそうしたジャンル分け自体があまり意味をなさないもの…

イアン・マキューアン『愛の続き』

イアン・マキューアン 小山太一訳 『愛の続き』 新潮文庫 イアン・マキューアンの『愛の続き』を読了しました。本書は新潮クレストブックスで出版された後に文庫本になったもので、ブッカー賞を受賞した『アムステルダム』に続いて新潮文庫に収められていま…

村上春樹『中国行きのスローボート』

村上春樹 『中国行きのスローボート』 中公文庫 村上春樹の『中国行きのスローボート』を読了しました。高校時代に古本屋で買って読んで以来、再読するのは何年ぶりのことでしょうか。全部で七編の短編が収められた村上春樹氏の初短編集です。 昔読んだとき…

エリザベス・ストラウト『オリーヴ・キタリッジの生活』

エリザベス・ストラウト 小川高義訳 『オリーヴ・キタリッジの生活』 ハヤカワ文庫 エリザベス・ストラウト(1956-)の『オリーヴ・キタリッジの生活』を読了しました。本書は2009年度のピュリッツァー賞受賞作で、オリーヴ・キタリッジという元教師の女性を…

ブライアン・エヴンソン『ウインドアイ』

ブライアン・エヴンソン 柴田元幸訳 『ウインドアイ』 新潮社 ブライアン・エヴンソン(1966-)の『ウインドアイ』を読了しました。本書と同じく新潮クレストブックスから出版されている『遁走状態』を読んだときは、どことなくパッとしない印象だったエヴン…

ミシェル・ウエルベック『ショーペンハウアーとともに』

ミシェル・ウエルベック 澤田直訳 『ショーペンハウアーとともに』 国書刊行会 ミシェル・ウエルベックの『ショーペンハウアーとともに』を読了しました。現代フランスを代表する作家のひとりであるミシェル・ウエルベックが、20代のときに出会って決定的な…

ジェイムズ・ディッキー『救い出される』

ジェイムズ・ディッキー 酒本雅之訳 『救い出される』 新潮文庫 ジェイムズ・ディッキー(1923-1997)の『救い出される』を読了しました。村上柴田翻訳堂の企画で復刊された一冊です。原題は“Deliverance”で1971年に日本で翻訳出版されたときには『わが心の…

板橋好枝・髙田賢一編著『はじめて学ぶ アメリカ文学史』

板橋好枝・髙田賢一編著 『はじめて学ぶ アメリカ文学史』 ミネルヴァ書房 板橋好枝・髙田賢一編著『はじめて学ぶ アメリカ文学史』を読了しました。古本屋で何となく手に取って買い求めたものですが、棚に何冊か置いてあったことからすると、どこかの大学で…

トンミ・キンヌネン『四人の交差点』

トンミ・キンヌネン 古市真由美訳 『四人の交差点』 新潮社 トンミ・キンヌネン(1973-)の『四人の交差点』を読了しました。キンヌネンはフィンランドの作家で、デビュー作である本書が国内でベストセラーになるとともに16か国で翻訳されたとのこと。新鋭作…

柳瀬尚紀『翻訳はいかにすべきか』

柳瀬尚紀 『翻訳はいかにすべきか』 岩波新書 柳瀬尚紀(1943-2016)の『翻訳はいかにすべきか』を読了しました。「翻訳という語は、筆者にとって、あくまで日本語である」と本書の冒頭で宣言されていますが、「日本語」への翻訳にこだわる著者は、本書にお…

W・サローヤン『パパ・ユーア クレイジー』

W・サローヤン 伊丹十三訳 『パパ・ユーア クレイジー』 新潮文庫 W・サローヤン(1908-1981)の『パパ・ユーア クレイジー』を読了しました。本書は昭和63年発行の新潮文庫で、ピンク色の背表紙に懐かしさを覚えます。「今月の新刊」と書かれた帯には「想像…

J・M・クッツェー『サマータイム、青年時代、少年時代 ―辺境からの三つの〈自伝〉』

J・M・クッツェー くぼたのぞみ訳 『サマータイム、青年時代、少年時代 ―辺境からの三つの〈自伝〉』 インスクリプト J・M・クッツェーの『サマータイム、青年時代、少年時代 ―辺境からの三つの〈自伝〉』を読了しました。もともとは『少年時代』、『青年時…

冨田恭彦『観念論の教室』

冨田恭彦 『観念論の教室』 ちくま新書 冨田恭彦の『観念論の教室』を読了しました。本書の主題となっているのは、ジョージ・バークリーの観念論(彼自身の言い方を使えば「物質否定論」)なのですが、「観念」という言葉のルーツを古代ギリシアの原子論、そ…

フォークナー『アブサロム、アブサロム!』

フォークナー 藤平育子訳 『アブサロム、アブサロム!』 岩波文庫 フォークナー(1897-1962)の『アブサロム、アブサロム!』を読了しました。解説によれば、フォークナーは本書が完成したときに「アメリカ人によってそれまでに書かれた中で最高の小説だと思…

カロッサ『指導と信従』

カロッサ 国松孝二訳 『指導と信従』 岩波文庫 カロッサ(1878-1956)の『指導と信従』を読了しました。ハンス・カロッサはドイツの詩人・小説家で医者でもあります。小説作品には自伝的なものが多く、本書も幼年時代から、医師としての生活、そしてシュテフ…

ジル=ガストン・グランジェ『科学の本質と多様性』

ジル=ガストン・グランジェ 松田克進・三宅岳史・中村大介訳 『科学の本質と多様性』 文庫クセジュ ジル=ガストン・グランジェ(1920-)の『科学の本質と多様性』を読了しました。「私は何を知るか?」を意味するフランス語の名前が冠せられた、文庫クセジュ…

李承雨『真昼の視線』

李承雨 金順姫訳 『真昼の視線』 岩波書店 李承雨の『真昼の視線』を読了しました。本書の帯には「韓国でノーベル文学賞候補として注目される作家の長編小説」と書かれています。フランスをはじめとする海外でも評価の高い作家で、ル・クレジオなども李承雨…

アンソニー・ドーア『すべての見えない光』

アンソニー・ドーア 藤井光訳 『すべての見えない光』 新潮社 アンソニー・ドーアの『すべての見えない光』を読了しました。ピュリッツァー賞受賞作品で、日本では「Twitter文学賞」も受賞している本書ですが、長いこと本棚に読まれないままに置かれていて、…

ウラジミール・ナボコフ『マーシェンカ キング、クイーン、ジャック』

ウラジミール・ナボコフ 奈倉有里・諫早勇一訳 『マーシェンカ キング、クイーン、ジャック』 新潮社 ウラジミール・ナボコフ(1899-1977)の『マーシェンカ キング、クイーン、ジャック』を読了しました。ロシア語で書かれた初期の作品を中心に、英語から重…

北村薫『太宰治の辞書』

北村薫 『太宰治の辞書』 創元推理文庫 北村薫の『太宰治の辞書』を読了しました。円紫さんと《私》のシリーズ第六作目です。登場人物もすっかり歳を重ねていて、第一作で大学生だった《私》も、本作では出版社に勤めるベテラン編集者になっています。本をこ…

ロバート・L・スティーブンソン『宝島』

ロバート・L・スティーブンソン 鈴木恵訳 『宝島』 新潮文庫 ロバート・L・スティーブンソン(1850-1894)の『宝島』を読了しました。『ジキルとハイド』の著者としてよく知られているスティーブンソンですが、本書『宝島』もつとに有名な作品です。とはいえ…

W・V・O・クワイン『論理的観点から 論理と哲学をめぐる九章』

W・V・O・クワイン 飯田隆訳 『論理的観点から 論理と哲学をめぐる九章』 勁草書房 W・V・O・クワイン(1908-2000)の『論理的観点から 論理と哲学をめぐる九章』を読了しました。本書には、これを読んでいないと「モグリ」の哲学研究者と言われてしまうとい…

内井惣七『シャーロック・ホームズの推理学』

内井惣七 『シャーロック・ホームズの推理学』 講談社現代新書 内井惣七の『シャーロック・ホームズの推理学』を読了しました。シャーロック・ホームズは狭い意味での“logician”だったということを、ホームズの台詞や行動と19世紀の科学方法論とを比較するか…

坂本百大編『現代哲学基本論文集Ⅱ』

坂本百大編 『現代哲学基本論文集Ⅱ』 勁草書房 坂本百大編『現代哲学基本論文集Ⅱ』を読了しました。本書の収録作品は以下の通りです。 ジョージ・E・ムーア『観念論論駁』 アルフレッド・タルスキ『真理の意味論的観点と意味論の基礎』 ウィラード・V・O・ク…

冨田恭彦『クワインと現代アメリカ哲学』

冨田恭彦 『クワインと現代アメリカ哲学』 世界思想社 冨田恭彦の『クワインと現代アメリカ哲学』を読了しました。1994年に出版されている本書ですが、内容的には四半世紀を過ぎても古びることなく、クワイン哲学の良い入門書になっていると思います。とりわ…

飯田隆『言語哲学大全Ⅳ 真理と意味』

飯田隆 『言語哲学大全Ⅳ 真理と意味』 勁草書房 飯田隆の『言語哲学大全Ⅳ 真理と意味』を読了しました。全四巻をなす『言語哲学大全』の完結巻となります。本書の主題はデイヴィドソンのプログラムを継承するかたちで、自然言語である日本語(の一部)に意味…