文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

アーサー・ミラー『セールスマンの死』

アーサー・ミラー 倉橋健訳 『セールスマンの死』 ハヤカワ演劇文庫 アーサー・ミラー(1915-2005)の『セールスマンの死』を読了しました。本書はアーサー・ミラーの代表的な戯曲作品でピュリッツァー賞受賞作です。作者の作品を読むのは私にとって初めての…

森博嗣『まどろみ消去』

森博嗣 『まどろみ消去』 講談社文庫 森博嗣の『まどろみ消去』を読了しました。作者が初めて発表した短編集ということになるのでしょうか、ノンシリーズ作品に加えて、お馴染みのシリーズキャラクターが登場する作品もあわせて収録されています。ミステリー…

川端裕人『声のお仕事』

川端裕人 『声のお仕事』 文春文庫 川端裕人の『声のお仕事』を読了しました。声優の世界で奮闘する若者の姿を描いた小説で、丁寧な取材に裏打ちされた作者らしい誠実な視点から語られる物語に惹き込まれてしまいました。ヤングアダルト作品と呼ぶには主人公…

赤川次郎『三毛猫ホームズの感傷旅行』

赤川次郎 『三毛猫ホームズの感傷旅行』 角川文庫 赤川次郎の『三毛猫ホームズの感傷旅行』を読了しました。三毛猫ホームズを主人公とするシリーズ作品の短編集なのですが、本書には「保健室の午後」というタイトルの作品が収録されていて、これは「三毛猫ホ…

清涼院流水『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.3』

清涼院流水 『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.3』 講談社 清涼院流水の『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.3』を読了しました。Book2も少し前に読んではいるのですが、どうやら備忘録として記事を投稿することを失念…

島田荘司『Classical Fantasy Within 第四話 アル・ヴァジャイヴ戦記 決死の千騎行』

島田荘司 『Classical Fantasy Within 第四話 アル・ヴァジャイヴ戦記 決死の千騎行』 講談社 島田荘司の『Classical Fantasy Within 第四話 アル・ヴァジャイヴ戦記 決死の千騎行』を読了しました。本シリーズの刊行計画が最終的に迎えることとなる結末を何…

宗田理『ぼくらの最終戦争』

宗田理 『ぼくらの最終戦争』 角川文庫 宗田理の『ぼくらの最終戦争』を読了しました。何となく読み返している本シリーズ作品も、本書をもって「中学生篇」の最終巻となりました。卒業式へと至るまでの子どもたちのエキセントリックな冒険譚も、卒業式の後に…

吉村達也『孤独』

吉村達也 『孤独』 新潮文庫 吉村達也の『孤独』を読了しました。作者あとがきで述べられている言葉が、本書の読後感を正しく解説してくれるように思います。本格ミステリーとしての資格を備えながらも、ホラーやサイコスリラー、あるいは心理小説といった道…

ダシール・ハメット『マルタの鷹』

ダシール・ハメット 小鷹信光訳 『マルタの鷹』 ハヤカワ文庫 ダシール・ハメット(1894-1961)の『マルタの鷹』を読了しました。私立探偵サム・スペードを主人公とするハードボイルド小説の古典作品です。プロットが面白いかといわれると首をかしげてしまう…

宮部みゆき『地下街の雨』

宮部みゆき 『地下街の雨』 集英社文庫 宮部みゆきの『地下街の雨』を読了しました。類まれなるページターナーである作者の長篇作品群と比べると、やや大人しい印象の短編小説が並ぶ作品集です。ひとつの奇妙な感情のようなものを梃子にして物語が展開してい…

鈴木光司『リング』

鈴木光司 『リング』 角川ホラー文庫 鈴木光司の『リング』を読了しました。いわずと知れたホラー作品の古典ともいうべき小説です。仕方のないことですが、現代の視点から読むと作中に登場するアイテム(ビデオテープ)には古めかしさが感じられます。主人公…

シュトルム『みずうみ 他四篇』

シュトルム 関泰祐訳 『みずうみ 他四篇』 岩波文庫 シュトルム(1817-1888)の『みずうみ 他四篇』を読了しました。本書には作家の処女作であるという短編作品「マルテと彼女の時計」、第二作「広間にて」、そして第三作「みずうみ」といった初期の短編作品…

我孫子武丸『裁く眼』

我孫子武丸 『裁く眼』 文春文庫 我孫子武丸の『裁く眼』を読了しました。ハードカバーとして(だったかソフトカバーだったか忘れてしまいましたが、とにかく単行本として)刊行された当時に読んで、その展開や結末についてはほとんど忘れた状態で、このたび…

佐藤友哉『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』

佐藤友哉 『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』 講談社ノベルス 佐藤友哉の『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』を読了しました。第21回メフィスト賞受賞作品で、以前に文庫で読んだ記憶があるのですが、今回はノベルス版で読むこととなりました…

島田荘司『殺人ダイヤルを捜せ』

島田荘司 『殺人ダイヤルを捜せ』 講談社文庫 島田荘司の『殺人ダイヤルを捜せ』を読了しました。物語の主人公が辿ることになる展開には、作者の女性に対する容赦の無さというものが現れているような気がして、少し驚いてしまうと共に眉をしかめさせられてし…

吉村達也『血液型殺人事件』

吉村達也 『血液型殺人事件』 角川文庫 吉村達也の『血液型殺人事件』を読了しました。血液型による性格分析というものをメインのテーマに据えたミステリー小説です。このテーマに対する作者のスタンスというのについて、はっきりとは読み取り切れない部分が…

貴志祐介『ミステリークロック』

貴志祐介 『ミステリークロック』 角川文庫 貴志祐介の『ミステリークロック』を読了しました。ホラー作家として定評のある作者ですが、ミステリー作品を書くとこうした作品が出来上がってくるというのは興味深く思われます。おそらく意図的にしている部分は…

道夫秀介『貘の檻』

道夫秀介 『貘の檻』 新潮文庫 道夫秀介の『貘の檻』を読了しました。作者の作品を読むのは随分と久し振りのような気がします。まとまりの良いミステリー作品ですが、物足りなさを感じる読者もいるのだろうなという印象は残ります。マージナルであることが目…

赤川次郎『銀色のキーホルダー』

赤川次郎 『銀色のキーホルダー』 光文社文庫 赤川次郎の『銀色のキーホルダー』を読了しました。シリーズの11作目で主人公は25歳となっています。本シリーズについては単体の作品というよりは大河小説として読んではいるのですが、ミステリーとしての展開が…

森博嗣『有限と微小のパン』

森博嗣 『有限と微小のパン』 講談社文庫 森博嗣の『有限と微小のパン』を読了しました。S&Mシリーズと称される作品群をあらためてすべて読み返したことになるのですが、本書については以前に読んだときよりも、今回の読書の方が納得させられて感心させら…

『モーパッサン短編集Ⅱ』

モーパッサン 青柳瑞穂訳 『モーパッサン短編集Ⅱ』 新潮文庫 『モーパッサン短編集Ⅱ』を読了しました。全三冊として編集されている新潮文庫のモーパッサン短編選集の二冊目である本書には「都会もの」としてテーマ付けられた作品群が収録されています。 有名…

村上春樹『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』

村上春樹 『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』 新潮文庫 村上春樹の『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』を読了しました。作者の旅行記は好きでよく読んでいたのですが、本書はまったくと言っていいほど記憶に残っておらず、今回あらため…

赤川次郎『招かれた女』

赤川次郎 『招かれた女』 角川文庫 赤川次郎の『招かれた女』を読了しました。ある意味ではこれも作者らしい展開のサスペンス作品で、常に読者の期待を裏切りながら物語が進んでいきます。こうしたプロットや結末の展開をどのように受け止めるかは様々だと思…

イェンセン『王の没落』

イェンセン 長島要一訳 『王の没落』 岩波文庫 イェンセン(1873-1950)の『王の没落』を読了しました。ヨハネス・ヴィルヘルム・イェンセンはデンマークの国民的作家で、1944年にノーベル文学賞を受賞しています。本書はイェンセンが16世紀の北欧を舞台に描…

コーマック・マッカーシー『果樹園の守り手』

コーマック・マッカーシー 山口和彦訳 『果樹園の守り手』 春風社 コーマック・マッカーシー(1933-)の『果樹園の守り手』を読了しました。本書は1965年に発表されたマッカーシーのデビュー作品です。寡作で知られる作者が発表した小説は全部で12作品のよう…

岡田利規『掃除機』

岡田利規 『掃除機』 白水社 岡田利規の『掃除機』を読了しました。本書には表題作をはじめとして、ドイツとノルウェーの劇場で演じられた四篇の戯曲が収録されています。小説家であると共に、劇作家・演出家である作者のいわば本業である営みから生み出され…

村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』

村上春樹 『神の子どもたちはみな踊る』 新潮文庫 村上春樹の『神の子どもたちはみな踊る』を読了しました。ハードカバー刊行時に読んで以来ということになるため、20年以上も時間を空けてからの再読ということになりました。それぞれまったく独立したエピソ…

吉村達也『ボイス』

吉村達也 『ボイス』 角川ホラー文庫 吉村達也の『ボイス』を読了しました。韓国のホラー映画のノベライズということです(作者が韓国映画をノベライズするに至った経緯が一体どういうものなのかはよく解らないのですが)。原作もあり、プロットはしっかりし…

宗田理『2年A組探偵局 ラッキー・マウスの謎』

宗田理 『2年A組探偵局 ラッキー・マウスの謎』 角川文庫 宗田理の『2年A組探偵局 ラッキー・マウスの謎』を読了しました。中学生を探偵とするシリーズ作品の第一作で、このシリーズの登場人物たちもやがてメインシリーズである「ぼくら」シリーズとクロスオ…

赤川次郎『三毛猫ホームズのクリスマス』

赤川次郎 『三毛猫ホームズのクリスマス』 角川文庫 赤川次郎の『三毛猫ホームズのクリスマス』を読了しました。やはり三毛猫ホームズシリーズは長編作品が面白いというか、短編作品は良くも悪くも記憶に残らない作品が多いなと思わされてしまいます。 【満…