文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

コリン・デクスター『謎まで三マイル』

コリン・デクスター 大庭忠男訳 『謎まで三マイル』 ハヤカワ文庫 コリン・デクスター(1930-2017)の『謎まで三マイル』を読了しました。思考の霧の中を彷徨うことで事件の捜査を行うモース主任警部を主人公とするミステリ作品の一作です。いみじくも本書の…

フェルナンド・ペソア『[新編]不穏の書、断章』

フェルナンド・ペソア 澤田直訳 『[新編]不穏の書、断章』 平凡社ライブラリー フェルナンド・ペソア(1888-1935)の『[新編]不穏の書、断章』を読了しました。ポルトガルの詩人・作家であるフェルナンド・ペソアは、イタリアの作家であるアントニオ・タ…

アリ・スミス『冬』

アリ・スミス 木原善彦訳 『冬』 新潮社 アリ・スミス(1962-)の『冬』を読了しました。『秋』に続く四季をタイトルに冠した小説作品群の第二作目となります。シリーズ全体を通して登場人物などに緩やかな繋がりがありつつ、時事を小説世界の中に取り込みな…

カズオ・イシグロ『忘れられた巨人』

カズオ・イシグロ 土屋政雄訳 『忘れられた巨人』 ハヤカワ文庫 カズオ・イシグロ(1954-)の『忘れられた巨人』を読了しました。ハードカバーで刊行された当時に読んで以来、訳7年振りの再読となりました。物語の鍵となる霧の存在感とそれがもたらす忘却の…

『ヘンリー・ジェイムズ作品集2 ポイントンの蒐集品 メイジーの知ったこと 檻の中』

大西昭男 多田敏男 川西進 青木次生 訳 『ヘンリー・ジェイムズ作品集2 ポイントンの蒐集品 メイジーの知ったこと 檻の中』 国書刊行会 『ヘンリー・ジェイムズ作品集2 ポイントンの蒐集品 メイジーの知ったこと 檻の中』を読了しました。収録作品のうち「ポ…

阿部和重『グランド・フィナーレ』

阿部和重 『グランド・フィナーレ』 講談社文庫 阿部和重の『グランド・フィナーレ』を読了しました。2005年に刊行された本書は第132回芥川賞受賞作なのですが、作者がそれ以前に発表した『インディビジュアル・プロジェクション』といった作品や、作者の故…

ヘッセ『デーミアン』

ヘッセ 酒寄進一訳 『デーミアン』 光文社古典新訳文庫 ヘッセ(1877-1962)の『デーミアン』を読了しました。学生時代に岩波文庫で読んだときの訳題の表記は『デミアン』だったと思うのですが、こちらの方が原語の発音に近いということなのでしょうか。1919…

『パウル・ツェラン全詩集Ⅲ』

中村朝子訳 『パウル・ツェラン全詩集Ⅲ』 青土社 『パウル・ツェラン全詩集Ⅲ』を読了しました。本書の内容については、巻末の訳者あとがきの中で次のように述べられています。 この訳詩集の底本には、全五巻からなる、現在刊行されている唯一のパウル・ツェ…

ヘミングウェイ『誰がために鐘は鳴る』

ヘミングウェイ 高見浩訳 『誰がために鐘は鳴る』 新潮文庫 ヘミングウェイ(1899-1961)の『誰がために鐘は鳴る』を読了しました。左派と右派に別れて苛烈な争いが行われたスペイン内戦を舞台にした小説で、長編第一作である『日はまた昇る』に続いて、スペ…

スティーヴン・キング『ダークタワー Ⅳ-1/2 鍵穴を吹き抜ける風』

スティーヴン・キング 風間賢二訳 『ダークタワー Ⅳ-1/2 鍵穴を吹き抜ける風』 角川文庫 スティーヴン・キング(1947-)の『ダークタワー Ⅳ-1/2 鍵穴を吹き抜ける風』を読了しました。本書はシリーズが完結に至った後に書かれた、いわばスピンオフのような位…

米澤穂信『巴里マカロンの謎』

米澤穂信 『巴里マカロンの謎』 創元推理文庫 米澤穂信の『巴里マカロンの謎』を読了しました。シリーズ作品を読んでいたのは、もう随分と昔のことになってしまったため、作品の時系列がよく解らなくなっていたのですが、どうやら時系列としては既刊作品の間…

ゲーテ『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』

ゲーテ 山崎章甫訳 『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』 岩波文庫 ゲーテ(1749-1832)の『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』を読了しました。ドイツの教養小説(Bildungsroman)の古典作品として知られる本書ですが、これまでは手に取る機会がなく…

大江健三郎 文/大江ゆかり 画『ゆるやかな絆』

大江健三郎 文/大江ゆかり 画 『ゆるやかな絆』 講談社文庫 大江健三郎の『ゆるやかな絆』を読了しました。エッセイ集『恢復する家族』の続編とでもいうべき作品で、原著は1996年に刊行されています。1994年のノーベル文学賞受賞の時期についての回想をはじ…

M・バルガス=リョサ『パンタレオン大尉と女たち』

M・バルガス=リョサ 高見英一訳 『パンタレオン大尉と女たち』 新潮社 M・バルガス=リョサ(1936-)の『パンタレオン大尉と女たち』を読了しました。本書は品切れ重版未定が続いていて、なかなか手に取ることができなかったのですが、このたびようやく読むこ…

カレル・チャペック『白い病』

カレル・チャペック 阿部賢一訳 『白い病』 岩波文庫 カレル・チャペック(1890-1938)の『白い病』を読了しました。著者が亡くなる前年の1937年に発表されたこの戯曲作品は、ナチス・ドイツによるチェコスロバキア共和国の解体を目前にした時代にあって、疫…

アンドレイ・サプコフスキ『ウィッチャーⅣ ツバメの塔』

アンドレイ・サプコフスキ 川野靖子訳 『ウィッチャーⅣ ツバメの塔』 ハヤカワ文庫 アンドレイ・サプコフスキの『ウィッチャーⅣ ツバメの塔』を読了しました。全五作のシリーズ作品のうち、本書は四番目の長編作品となりますが、物語が閉じられていく気配は…

舞城王太郎『私はあなたの瞳の林檎』

舞城王太郎 『私はあなたの瞳の林檎』 講談社文庫 舞城王太郎の『私はあなたの瞳の林檎』を読了しました。2001年にデビューして以来、舞城氏の小説についてはそのほとんどを読んでいるのですが、今の若い人にも氏の作品は読まれているのでしょうか。本書に収…

J・K・ローリング『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』

J・K・ローリング 松岡佑子訳 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』 静山社 J・K・ローリングの『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』を読了しました。シリーズ五作目となる本書ですが、この作品くらいからシリーズを原作とした映画作品の方にはまったく触…

スティーヴン・キング『ダークタワー Ⅳ 魔道師と水晶球』

スティーヴン・キング 風間賢二訳 『ダークタワー Ⅳ 魔道師と水晶球』 角川文庫 スティーヴン・キング(1947-)の『ダークタワー Ⅳ 魔道師と水晶球』を読了しました。前作の『荒地』においてまるで中途半端なままに打ち切られた、知性を持つ高速モノレール〈…

『ヘッセ詩集』

ヘルマン・ヘッセ 高橋健二訳 『ヘッセ詩集』 新潮文庫 ヘルマン・ヘッセ(1877-1962)の『ヘッセ詩集』を読了しました。「詩人になる」ことへの若者の切望と苦悩を多くの小説のかたちで描いたヘッセですが、本書にはそのヘッセが1898年から1945年頃にかけて…

J・K・ローリング『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』

J・K・ローリング 松岡佑子訳 『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』 静山社 J・K・ローリングの『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』を読了しました。シリーズ四作目となる本書は、ストーリー展開もこれまでの三冊とはいささか趣向が変わっていて、シリー…

レイ・ブラッドベリ『火星年代記〔新版〕』

レイ・ブラッドベリ 『火星年代記〔新版〕』 レイ・ブラッドベリ(1920-2012)の『火星年代記〔新版〕』を読了しました。単行本としては1950年に発表されたSF小説の古典ともいえる作品ですが、本書は「新版」と銘打たれているように、1997年になってから作者…

有栖川有栖『こうして誰もいなくなった』

有栖川有栖 『こうして誰もいなくなった』 角川文庫 有栖川有栖の『こうして誰もいなくなった』を読了しました。本格ミステリ作家である作者のノンシリーズの短編・中編からなる作品集です。作者自身が解題しているように、本格ミステリというよりはホラー作…

大江健三郎 文/大江ゆかり 画『恢復する家族』

大江健三郎 文/大江ゆかり 画 『恢復する家族』 講談社文庫 大江健三郎の『恢復する家族』を読了しました。障害を持って生まれてきた長男との共生の歩みを手掛かりとして、傷と癒しについての思索を深めていく作家と家族の様子を綴った長篇エッセイです。と…

H・P・ラヴクラフト『狂気の山脈にて クトゥルー神話傑作選』

H・P・ラヴクラフト 南條竹則編訳 『狂気の山脈にて クトゥルー神話傑作選』 新潮文庫 H・P・ラヴクラフト(1890-1937)の『狂気の山脈にて クトゥルー神話傑作選』を読了しました。新潮スタークラシックスと銘打って海外文学の古典新訳が不定期で刊行されて…

J・K・ローリング『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』

J・K・ローリング 松岡佑子訳 『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』 静山社 J・K・ローリングの『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』を読了しました。良くいえば定番のプロット、悪くいえば同工異曲ともいえる展開ではあるのですが、それでも少しずつ…

ジム・フジーリ『ペット・サウンズ』

ジム・フジーリ 村上春樹訳 『ペット・サウンズ』 新潮社 ジム・フジーリの『ペット・サウンズ』を読了しました。作者はミステリー小説のほか、ロックやポップスに関する文章を発表していて、本書はアメリカのロックバンドであるビーチ・ボーイズが1966年に…

ヴォルテール『カンディード 他五篇』

ヴォルテール 植田祐次訳 『カンディード 他五篇』 岩波文庫 ヴォルテール(1694-1778)の『カンディード 他五篇』を読了しました。「コント」というのは、もともとフランス語で短い寸劇のことを意味するそうですが、本書にはヴォルテールの代表的なコントの…

村上春樹・安西水丸『村上朝日堂の逆襲』

村上春樹・安西水丸 『村上朝日堂の逆襲』 新潮文庫 1985年から1986年にかけて「週間朝日」で連載されたエッセイ集。連載期間は長編作品でいえば『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』と『ノルウェイの森』が発表される間の期間に当たります。安…

J・K・ローリング『ハリー・ポッターと秘密の部屋』

J・K・ローリング 松岡佑子訳 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』 静山社 J・K・ローリングの『ハリー・ポッターと秘密の部屋』を読了しました。魔法学校に通うハリー・ポッターを主人公とするファンタジーシリーズの第二作品目です。黒幕の存在を完全には気…