文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

サルマン・ラシュディ『真夜中の子供たち』

サルマン・ラシュディ 寺門泰彦訳 『真夜中の子供たち』 岩波文庫 サルマン・ラシュディ(1947-)の『真夜中の子供たち』を読了しました。本書の主人公であるサリーム・シナイと同じく1947年にインドのボンベイで生まれたラシュディは(ただしその日時につい…

『対訳 ブラウニング詩集―イギリス詩人選(6)』

富士川義之訳 『対訳 ブラウニング詩集―イギリス詩人選(6)』 岩波文庫 『対訳 ブラウニング詩集―イギリス詩人選(6)』を読了しました。19世紀に活躍したイギリスの詩人ロバート・ブラウニング(1812-1889)の作品が、英語と日本語の対訳形式で40作品収録…

ピエール・ルメートル『わが母なるロージー』

ピエール・ルメートル 橘明美訳 『わが母なるロージー』 文春文庫 ピエール・ルメートル(1951-)の『わが母なるロージー』を読了しました。カミーユ・ヴェルーヴェン警部を主人公とする作品は三作品で完結していたはずなのですが、いわば番外編のようなかた…

ロマン・ロラン『ベートーヴェンの生涯』

ロマン・ロラン 片山敏彦訳 『ベートーヴェンの生涯』 岩波文庫 ロマン・ロラン(1866-1944)の『ベートーヴェンの生涯』を読了しました。大河小説『ジャン・クリストフ』の作者であるロマン・ロランは多くの伝記作品も残しているのですが、その代表作のひと…

ロバート・A・ハインライン『月は無慈悲な夜の女王』

ロバート・A・ハインライン 矢野徹訳 『月は無慈悲な夜の女王』 ハヤカワ文庫 ロバート・A・ハインライン(1907-1988)の『月は無慈悲な夜の女王』を読了しました。ヒューゴー賞を受賞したハインラインの代表作のひとつとされる長編小説で、原題は“The Moon …

クリストファー・プリースト『逆転世界』

クリストファー・プリースト 安田均訳 『逆転世界』 創元SF文庫 クリストファー・プリースト(1943-)の『逆転世界』を読了しました。イギリスの作家で一般的にはSFジャンルに分類されるプリーストですが、いわゆる主流文学の読み手からも人気の作家であるよ…

スティーヴン・キング『ダークタワー Ⅲ 荒地』

スティーヴン・キング 風間賢二訳 『ダークタワー Ⅲ 荒地』 角川文庫 スティーヴン・キング(1947-)の『ダークタワー Ⅲ 荒地』を読了しました。シリーズを最後まで読み切るというタスクをこなすこと自体が目的となりつつある読書ですが、中だるみの気持ちが…

有栖川有栖『カナダ金貨の謎』

有栖川有栖 『カナダ金貨の謎』 講談社文庫 有栖川有栖の『カナダ金貨の謎』を読了しました。ドラマシリーズ「刑事コロンボ」などでもお馴染みのミステリー作品の形式の一つである倒叙物の表題作をはじめとして、作者らしい本格ミステリが並ぶ短編集です。 …

阿部和重『インディヴィジュアル・プロジェクション』

阿部和重 『インディヴィジュアル・プロジェクション』 新潮文庫 阿部和重の『インディヴィジュアル・プロジェクション』を読了しました。学生時代に読んで以来のことなので、何年ぶりになるのでしょうか。スパイ私塾に所属した過去を持つオブセッションに囚…

J・S・ミル『功利主義』

J・S・ミル 関口正司訳 『功利主義』 岩波文庫 J・S・ミル(1806-1873)の『功利主義』を読了しました。政治哲学や論理学の分野で歴史に名を残すミルですが、ベンサムが創出した功利主義の論者としてもよく知られています。ミルが功利主義をどのように擁護し…

カズオ・イシグロ『クララとお日さま』

カズオ・イシグロ 土屋政雄訳 『クララとお日さま』 早川書房 カズオ・イシグロの『クララとお日さま』を読了しました。原題は“Klara and the Sun”です。ノーベル文学賞受賞第一作と謳われる本書のテーマは「AI」で、同じく現代イギリスを代表する作家のひと…

村田沙耶香『殺人出産』

村田沙耶香 『殺人出産』 講談社文庫 村田沙耶香の『殺人出産』を読了しました。村田氏は恐ろしくも新しい世界を小説として表現することのできる異能の作家だと思っているのですが、本書についてもその評価は間違いなく当てはまると言っていいでしょう。10人…

フランク・マコート『アンジェラの灰』

フランク・マコート 土屋政雄訳 『アンジェラの灰』 新潮文庫 フランク・マコート(1930-2009)の『アンジェラの灰』を読了しました。アイルランド系アメリカ人であるマコートが、アイルランドのリムリックで過ごした少年時代を回想して描いた自伝的小説(「…

マイクル・コナリー『レイトショー』

マイクル・コナリー 古沢嘉通訳 『レイトショー』 講談社文庫 マイクル・コナリーの『レイトショー』を読了しました。マイケル・ボッシュを主人公とする一連のシリーズで知られるコナリーですが、今回の作品はロス市警に勤める女性刑事レネイ・バラードを主…

『対訳 ディキンソン詩集―アメリカ詩人選(3)』

亀井俊介訳 『対訳 ディキンソン詩集―アメリカ詩人選(3)』 岩波文庫 『対訳 ディキンソン詩集―アメリカ詩人選(3)』を読了しました。ポー、ホイットマン、フロストなどの対訳も刊行されている岩波文庫の対訳アメリカ詩人選集ですが、今回読むのはエミリー…

ウィリアム・トレヴァー『ラスト・ストーリーズ』

ウィリアム・トレヴァー 栩木伸明訳 『ラスト・ストーリーズ』 国書刊行会 ウィリアム・トレヴァー(1928-2016)の『ラスト・ストーリーズ』を読了しました。アイルランド出身の作家トレヴァーの最後の作品集が本書で、10編の短編作品が収録されています。掬…

大江健三郎『キルプの軍団』

大江健三郎 『キルプの軍団』 岩波文庫 大江健三郎の『キルプの軍団』を読了しました。ブレイクやダンテをはじめとして海外の文学作品を読解することをモチーフに、自身の小説の推進力としてきた大江氏ですが、本作ではディケンズの書いた『骨董屋』を読む刑…

J・S・ミル『自由論』

J・S・ミル 関口正司訳 『自由論』 岩波文庫 J・S・ミル(1806-1873)の『自由論』を読了しました。経験主義に立脚する哲学者であり論理学や科学哲学の嚆矢となる業績を残し、倫理学の分野ではベンサムの功利主義を発展させ、さらには経済学に関する論考も残…

『大江健三郎 作家自身を語る』

大江健三郎 聞き手・構成 尾崎真理子 『大江健三郎 作家自身を語る』 新潮文庫 『大江健三郎 作家自身を語る』を読了しました。2000年代に行われたロングインタビューのまとめに、東日本大震災を経た後に行われたインタビューを加えた増補版です。デビュー前…

ピエール・ルメートル『死のドレスを花婿に』

ピエール・ルメートル 吉田恒雄訳 『死のドレスを花婿に』 文春文庫 ピエール・ルメートル(1951-)の『死のドレスを花婿に』を読了しました。カミーユ・ヴェルーヴェン警部を主人公とする「容赦の無い」サスペンスプロットで知られるルメートルが2009年に発…

J・G・バラード『太陽の帝国』

J・G・バラード 山田和子訳 『太陽の帝国』 創元SF文庫 J・G・バラード(1930-2009)の『太陽の帝国』を読了しました。『ハイ・ライズ』以来の読書となる二冊目のバラード作品は、1934年に発表されてブッカー賞候補作ともなったベストセラー作品で、バラード…

ソポクレース『アンティゴネー』

ソポクレース 中務哲郎訳 『アンティゴネー』 岩波文庫 ソポクレス(前497/6頃-前406/5頃)の『アンティゴネー』を読了しました。オイディプスの娘であるアンティゴネーを主人公とするギリシア悲劇の一作です。オイディプスの死後、王権についたクレオーン(…

フォークナー『八月の光』

フォークナー 諏訪部浩一訳 『八月の光』 岩波文庫 フォークナー(1897-1962)の『八月の光』を読了しました。1932年に発表された作品でヨクナパトーファ・サーガの一作とされますが、原題である“Light in August”は当初は“Dark House”であったといわれます…

A・デュマ『ダルタニャン物語』

A・デュマ 鈴木力衛訳 『ダルタニャン物語』 ブッキング アレクサンドル・デュマ・ペール(1802-1870)の『ダルタニャン物語』を読了しました。日本でもつとに有名な『三銃士』(1844)を嚆矢として、『二十年後』(1845)、そして『ブラジュロンヌ子爵』(1…

筒井康隆『夢の木坂分岐点』

筒井康隆 『夢の木坂分岐点』 新潮文庫 筒井康隆の『夢の木坂分岐点』を読了しました。谷崎潤一郎賞受賞作ということで、随分と昔に読んだ記憶はあるのですが、いつのことだったかまでは覚えていません。あり得べき生が分岐的に展開されていくプロットは、そ…

桜井哲夫『現代思想の冒険者たち 第26巻 フーコー―知と権力』

桜井哲夫 『現代思想の冒険者たち 第26巻 フーコー―知と権力』 講談社 桜井哲夫の『現代思想の冒険者たち 第26巻 フーコー―知と権力』を読了しました。1990年代後半に公刊された「現代思想の冒険者たち」シリーズの一冊です。博士論文である『狂気の歴史』、…

ソポクレス『オイディプス王』

ソポクレス 藤沢令夫 『オイディプス王』 岩波文庫 ソポクレス(前497/6頃-前406/5頃)の『オイディプス王』を読了しました。言わずとしれた古代ギリシア悲劇のマスターピースです。ソポクレスは120以上もの戯曲を制作したそうですが、そのほとんどは散逸し…

冨田恭彦『バークリの『原理』を読む――「物質否定論」の論理と批判』

冨田恭彦 『バークリの『原理』を読む――「物質否定論」の論理と批判』 勁草書房 冨田恭彦の『バークリの『原理』を読む――「物質否定論」の論理と批判』を読了しました。『観念論の教室』などのこれまでの冨田氏の著作においても展開されている、バークリーの…

イアン・マキューアン『恋するアダム』

イアン・マキューアン 村松潔訳 『恋するアダム』 新潮社 イアン・マキューアン(1948-)の『恋するアダム』を読了しました。原題は“Machines Like Me”で、相変わらず意訳したタイトルをつけるのはマキューアン作品翻訳の定番なのでしょうか。マキューアン自…

コーネリス・ドヴァール『パースの哲学について本当のことを知りたい人のために』

コーネリス・ドヴァール 大沢秀介訳 『パースの哲学について本当のことを知りたい人のために』 勁草書房 コーネリス・ドヴァールの『パースの哲学について本当のことを知りたい人のために』を読了しました。原題は“A Guide For The Perplexed, Peirce”で「困…