2023-11-01から1ヶ月間の記事一覧
トルストイ 藤沼貴訳 『少年時代』 岩波文庫 トルストイ(1828-1910)の『少年時代』を読了しました。『幼年時代』に続いて描かれた自伝的小説で、前作に続く時系列のなかで少年の内的生活と周囲の観察を軸にした描写が展開されています。後年と変わらぬ緻密…
森博嗣 『人形式モナリザ』 講談社文庫 森博嗣の『人形式モナリザ』を読了しました。作者の美意識やミステリー観にどこまで共感できるかによって、本書に対する感想は変わってくるのかもしれません(本書に限らず、読書とはすべからくそういうものかもしれま…
清涼院流水 『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.5』 講談社 清涼院流水の『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.5』を読了しました。楽しく読み進めているのですが、ティーンエージャーの頃に読んでいればまた熱中度も違っ…
島田荘司 『Classical Fantasy Within 第六話 アル・ヴァジャイヴ戦記 ポルタトーリの壷』 講談社 島田荘司の『Classical Fantasy Within 第六話 アル・ヴァジャイヴ戦記 ポルタトーリの壷』を読了しました。物語の展開としては、本シリーズ第二部である「ア…
大沢在昌 『新宿鮫Ⅱ 毒猿』 光文社文庫 大沢在昌の『新宿鮫Ⅱ 毒猿』を読了しました。人気シリーズ作品の第二作目で、存在感のある敵役を配した王道ともいえるプロットが敷かれています。いかにも第二作目といった感じの作品といえばいいでしょうか。 【満足…
吉村達也 『鳥取砂丘の青い風』 実業之日本社文庫 吉村達也の『鳥取砂丘の青い風』を読了しました。「レイルロード小説」と銘打たれた作品で、鉄道を舞台にした(レイル)ロードムービーならぬ「ロードノベル」という趣向から生まれた企画のようです。サラリ…
有栖川有栖 『怪しい店』 角川文庫 有栖川有栖の『怪しい店』を読了しました。ハードカバーの刊行時に読んだことがあるはずなのですが、内容についてはまるで覚えていない状態での再読となりました。いささか地味ではあるのですが、作者らしいミステリー作品…
スティーヴン・ハンター 佐藤和彦訳 『極大射程』 新潮文庫 スティーヴン・ハンターの『極大射程』を読了しました。冒険小説の有名作品なのですが読むのは今回が初めてのことで、映画化された作品についても未視聴です。銃に関する偏執的な愛着を描いている…
宗田理 『ぼくらの大脱走』 角川文庫 宗田理の『ぼくらの大脱走』を読了しました。「ぼくら」を主人公とするシリーズもいわゆる「高校編」に突入して、現実の事件をモチーフにしながらも絶妙にファンタジックな設定のもとで、仲間を助けるためのぼくらの冒険…
川端裕人 『ギャングエイジ』 PHP文芸文庫 川端裕人の『ギャングエイジ』を読了しました。小学校を舞台に新米教師の瑞々しい苦闘を描いた小説です。PTAに関する著作も上梓している作者のことで、よくよく学校現場を取材して書いたのだろうということがよく感…
吉村達也 『修善寺温泉殺人事件』 ケイブンシャ文庫 吉村達也の『修善寺温泉殺人事件』を読了しました。テーマや探偵役の設定など面白い部分もあるのですが、ミステリーとしての出来栄えはといえば、並みの作品と言わざるを得ないのかなというのが正直な感想…
川端裕人 『ドードーをめぐる堂々めぐり 正保四年に消えた絶滅鳥を追って』 岩波書店 川端裕人の『ドードーをめぐる堂々めぐり 正保四年に消えた絶滅鳥を追って』を読了しました。鎖国時代の17世紀に日本の長崎に来ていたという絶滅鳥「ドードー」の行方を追…
吉村達也 『京都天使突抜通の恋』 集英社文庫 吉村達也の『京都天使突抜通の恋』を読了しました。作者自身が「心理サスペンス」と名付けた作品群の中では最初期に発表されたもので、渾身の力作という印象の作品です。最後まで面白く読むことができました。 …
新田次郎 『劒岳〈点の記〉』 文春文庫 新田次郎の『劒岳〈点の記〉』を読了しました。山岳小説のパイオニアである作者の代表作といえる作品のひとつで、2009年には映画化もされた実話をもとにした小説です。いささか地味に感じられる部分がいかにも史実であ…
ヘニング・マンケル 柳沢由美子訳 『北京から来た男』 創元推理文庫 ヘニング・マンケル(1948-2015)の『北京から来た男』を読了しました。いわゆるノンシリーズの作品で、物語の冒頭で語られる事件の壮絶さに慄然とさせられます。作者の政治意識と作品のテ…
島田荘司 『網走発遙かなり』 講談社文庫 島田荘司の『網走発遙かなり』を読了しました。長篇小説なのですが、構成としては連作短編集といった趣もあって、作者のキャリア初期の力作といえる作品です。もう少し注目されても良いと思われる作品ではあるのです…
トルストイ 藤沼貴訳 『幼年時代』 岩波文庫 トルストイ(1828-1910)の『幼年時代』を読了しました。トルストイが23歳の若さのときに発表した処女小説で、ツルゲーネフはこの作品を激賞したとのこと。繊細に描かれた10歳の少年の内的生活は、自伝的作品とし…
村上春樹 『海辺のカフカ』 新潮文庫 村上春樹の『海辺のカフカ』を読了しました。随分と久し振りの読み返すことになりましたが、物語の展開など比較的細部に至るまで記憶に残っていて、今回は長い物語の全体を成す骨格の部分に注意しながら読み進めていく読…
貴志祐介 『コロッサスの鉤爪』 角川文庫 貴志祐介の『コロッサスの鉤爪』を読了しました。もともとは『ミステリークロック』と合わせて一冊の短編集として上梓されていたものが、文庫化にあたって分冊されたとのことですが、昨今の書籍の値段の高騰具合も踏…
村上春樹・安西水丸 『ランゲルハンス島の午後』 新潮文庫 村上春樹・安西水丸の『ランゲルハンス島の午後』を読了しました。いつもの村上節が炸裂する短いエッセイ集なのですが、そこに付けられた安西氏の絵が何ともいえない味わいを見せていて、今回の読書…
我孫子武丸 『人形は眠れない』 講談社文庫 我孫子武丸の『人形は眠れない』を読了しました。シリーズ三作目に当たる本書は「短編の面白さを兼ね備えた長編」を目指したものであると作者自身によって述べられているのですが、その狙い自体が面白く、いわゆる…
舞城王太郎 『されど私の可愛い檸檬』 講談社文庫 舞城王太郎の『されど私の可愛い檸檬』を読了しました。三篇の作品が収録された短編集で「理不尽で面倒だけれども愛するしかない戦慄含みの家族小説集」という裏表紙カバーに書かれた作品紹介が的を射ていて…
斜線堂有紀 『キネマ探偵カレイドミステリー~輪転不変のフォールアウト~』 メディアワークス文庫 斜線堂有紀の『キネマ探偵カレイドミステリー~輪転不変のフォールアウト~』を読了しました。シリーズの完結篇というべき作品で、フィクションというものに…
村上春樹・安西水丸 『日出る国の工場』 新潮文庫 村上春樹・安西水丸の『日出る国の工場』を読了しました。工場見学をテーマにしたエッセイ集ですが、取材先の中には一般的な意味では「工場」と呼べないようなもの(結婚式場、農場など)も含まれています。…