文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ウラジーミル・ソローキン『氷』

ウラジーミル・ソローキン 松下隆志訳 『氷』 河出書房新社 ウラジーミル・ソローキン(1955-)の『氷』を読了しました。本書は現代ロシア作家のソローキンが2002年に刊行した作品で、続いて発表されることになる『ブロの道』、そして『23000』とともに三部…

ダレル・P・ロウボトム『確率』

ダレル・P・ロウボトム 佐竹祐介訳 『確率』 岩波書店 ダレル・P・ロウボトムの『確率』を読了しました。岩波書店から刊行された「現代哲学のキーコンセプト」シリーズの一冊です。「確率」=“Proability”を巡る議論が見通しよく整理された良書です。 本書で…

サローヤン『ヒューマン・コメディ』

サローヤン 小川敏子訳 『ヒューマン・コメディ』 光文社古典新訳文庫 サローヤン(1908-1981)の『ヒューマン・コメディ』を読了しました。アルメニア人移民の2世として生まれたサローヤンが1943年に発表した長編作品が本書『ヒューマン・コメディ』です。…

シーグリッド・ヌーネス『友だち』

シーグリッド・ヌーネス 村松潔訳 『友だち』 新潮社 シーグリッド・ヌーネス(1951-)の『友だち』を読了しました。ニューヨーク生まれで書評誌の編集アシスタントを務めた後、作家になったという彼女の小説作品7作目が本書とのこと。全米図書賞の受賞作品…

小河原誠編『批判と挑戦―ポパー哲学の継承と発展にむけて』

小河原誠編 『批判と挑戦―ポパー哲学の継承と発展にむけて』 未来社 小河原誠の『批判と挑戦―ポパー哲学の継承と発展にむけて』を読了しました。科学という営みの輪郭を特徴付けるために「反証主義」を唱えた哲学者ポパーの受容史と、ポパーに対する批判への…

プラトン『国家』

プラトン 藤沢令夫訳 『国家』 岩波文庫 プラトン(BC427-BC347)の『国家』を読了しました。言わずとしれた古代の哲学者プラトンの著した対話篇です。文庫本上下巻で本文が900ページ超という長さのほぼ全編が、ソクラテスとアテナイの人々とによる対話形式…

ヘルマン・ヘッセ『ガラス球遊戯』

ヘルマン・ヘッセ 井出賁夫訳 『ガラス球遊戯』 角川文庫 ヘルマン・ヘッセ(1877-1962)の『ガラス球遊戯』を読了しました。本書はヘッセがノーベル文学賞を受賞する契機となったといわれている作品のようで、1943年に発表されたものです。『荒野のおおかみ…

エルモア・レナード『オンブレ』

エルモア・レナード 村上春樹訳 『オンブレ』 新潮文庫 エルモア・レナード(1925-2013)の『オンブレ』を読了しました。エルモア・レナードはエドガー賞も受賞したアメリカのミステリ畑の作家ですが、私が彼の作品を読むのは初めてのことでした。村上氏によ…

J・L・ボルヘス『ブロディーの報告書』

J・L・ボルヘス 鼓直訳 『ブロディーの報告書』 岩波文庫 J・L・ボルヘス(1899-1986)の『ブロディーの報告書』を読了しました。本書はアルゼンチンの作家ボルヘスの短編作品集で、比較的晩年になって発表された作品のようです。収録された作品群が持つ性格…

納富信留『プラトンとの哲学 対話篇を読む』

納富信留 『プラトンとの哲学 対話篇を読む』 岩波新書 納富信留の『プラトンとの哲学 対話篇を読む』を読了しました。著者自身が「あとがき」において触れているように、既に岩波新書にはプラトンを主題とした作品が2つもラインナップされています。そのう…

フォースター『ハワーズ・エンド』

フォースター 吉田健一訳 『ハワーズ・エンド』 河出書房新社 E・M・フォースター(1879-1970)の『ハワーズ・エンド』を読了しました。池澤夏樹氏の個人編集による世界文学全集の一冊として刊行されたもので、フォースターの作品に触れること自体が私にとっ…

星野智幸『目覚めよと人魚は歌う』

星野智幸 『目覚めよと人魚は歌う』 新潮文庫 星野智幸の『目覚めよと人魚は歌う』を読了しました。2000年に発表された三島賞受賞作です。日系ペルー人を主人公に据えた著者の視点は、その経歴からしてもグローバルなもので、ただそれだけでもフォローしたい…

ウィルフリド・セラーズ『経験論と心の哲学』

ウィルフリド・セラーズ 浜野研三訳 『経験論と心の哲学』 岩波書店 ウィルフリド・セラーズ(1912-1989)の『経験論と心の哲学』を読了しました。ローティによる序文とブランダムによる詳細な手引きが付されて一冊の書籍として刊行されていますが、本論自体…

内田百閒『ノラや』

内田百閒 『ノラや』 中公文庫 内田百閒(1889-1971)の『ノラや』を読了しました。愛猫「ノラ」と「クルツ」を巡って描かれたエッセイ(と言ってよいのでしょうか)が14編収められています。ペットロス文学というのか何というのか、不思議な連作です。 【満…

リサ・ボルトロッティ『非合理性』

リサ・ボルトロッティ 鴻浩介訳 『非合理性』 岩波書店 リサ・ボルトロッティの『非合理性』を読了しました。本書は「現代哲学のキーコンセプト」と題されて刊行された叢書の一冊で、イギリスのポリティ社から刊行された哲学教科書シリーズから精選された五…

一ノ瀬正樹『英米哲学入門―「である」と「べき」の交差する世界』

一ノ瀬正樹 『英米哲学入門―「である」と「べき」の交差する世界』 ちくま新書 一ノ瀬正樹の『英米哲学入門―「である」と「べき」の交差する世界』を読了しました。タイトルから想像されるのは、イギリス経験論あたりから始まって、プラグマティズムの論述も…