文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

2023-10-01から1ヶ月間の記事一覧

フィッツジェラルド『若者はみな悲しい』

フィッツジェラルド 小川高義訳 『若者はみな悲しい』 光文社古典新訳文庫 フィッツジェラルド(1896-1940)の『若者はみな悲しい』を読了しました。短編集はどうしても「傑作選」ということになりがちなフィッツジェラルドのオリジナルな短編集を読むことが…

大沢在昌『新宿鮫』

大沢在昌 『新宿鮫』 光文社文庫 大沢在昌の『新宿鮫』を読了しました。人気シリーズの原点となる作品で、緊密なプロットでクライマックスに至るまで盛り上がりを欠くことなく読ませます。よくできたハードボイルド作品なのですが、あらためて読み返してみて…

吉村達也『OL捜査網』

吉村達也 『OL捜査網』 光文社文庫 吉村達也の『OL捜査網』を読了しました。「OL」という表現自体が何とも古めかしいものとなってしまった現代にあっては、いささか古さが目立つ部分はあるものの、設定とプロットの面白さで読ませる作品になっています…

貴志祐介『天使の囀り』

貴志祐介 『天使の囀り』 角川ホラー文庫 貴志祐介の『天使の囀り』を読了しました。作者の初期作品といっていい時代の作品なのですが、怖さよりも生理的な嫌悪感の方が上回ってしまって、読み進めるのにいささか苦労してしまいます。登場人物を容赦なく扱っ…

清涼院流水『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.4』

清涼院流水 『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.4』 講談社 清涼院流水の『パーフェクト・ワールド What a perfect world! Book.4』を読了しました。ぶつ切りに読み進めてしまうかたちになっているのですが、ストーリー自体はシンプルに進…

吉村達也『トンネル』

吉村達也 『トンネル』 角川ホラー文庫 吉村達也の『トンネル』を読了しました。探偵役の造形もホラー小説としての展開も、とても面白そうでいて、いささか最後は尻すぼみになってしまう部分もあって、何とも中途半端な印象が残ってしまいます。 【満足度】★…

吉村達也『丸の内殺人物語』

吉村達也 『丸の内殺人物語』 角川文庫 吉村達也の『丸の内殺人物語』を読了しました。サラリーマンを主人公としたミステリー短編集で、もともとは『それは経費で落とそう』というタイトルで刊行されていた作品が文庫化にあたって改題されたものです(もとも…

島田荘司『Classical Fantasy Within 第五話 アル・ヴァジャイヴ戦記 ヒュッレム姫の救出』

島田荘司 『Classical Fantasy Within 第五話 アル・ヴァジャイヴ戦記 ヒュッレム姫の救出』 講談社 島田荘司の『Classical Fantasy Within 第五話 アル・ヴァジャイヴ戦記 ヒュッレム姫の救出』を読了しました。ファンタジー作品に挑戦しながらも、ところど…

吉村達也『天井桟敷の貴婦人』

吉村達也 『天井桟敷の貴婦人』 徳間文庫 吉村達也の『天井桟敷の貴婦人』を読了しました。作者にしては珍しい探偵による一人称視点での小説となっていて、新鮮な感覚で読むことができました。このような小説形式が採用されるに至った経緯についてもフィクシ…

マイ・シューヴァル/ペール・ヴァールー『バルコニーの男』

マイ・シューヴァル/ペール・ヴァールー 柳沢由実子訳 『バルコニーの男』 角川文庫 マイ・シューヴァル/ペール・ヴァールーの『バルコニーの男』を読了しました。刑事マルティン・ベックを主人公とするスウェーデンの警察小説の古典的シリーズの第三作目…

宗田理『怪盗サンクスの冒険』

宗田理 『怪盗サンクスの冒険』 角川文庫 宗田理の『怪盗サンクスの冒険』を読了しました。本書のカバー裏に記された紹介文には「恋とスリルとサスペンスに満ちたおしゃれな都会派ミステリー」とあるのですが、どのあたりの読者層をターゲットにしているのか…

森博嗣『黒猫の三角』

森博嗣 『黒猫の三角』 講談社文庫 森博嗣の『黒猫の三角』を読了しました。ミステリーとしての企みに満ちたシリーズの第一作目で、クセのある登場人物に慣れてしまえば面白く読むことができます。このシリーズはかなり昔に途中まで読み進めて断絶してしまっ…

川端裕人『へんてこな生き物』

川端裕人 『へんてこな生き物』 中公新書ラクレ 川端裕人の『へんてこな生き物』を読了しました。私は作者の小説のファンなのですが、もともとはサイエンスライターとしての著作に触れたことが作者を知る最初のきっかけでした。本書は作者がこれまで興味を持…

島田荘司『見えない女』

島田荘司 『見えない女』 光文社文庫 島田荘司の『見えない女』を読了しました。海外を舞台にしたノンシリーズの短編小説が三篇収録されていて、表紙カバーには「傑作トラベル・ミステリー」というキャッチコピーが付されています。表題作はチェスタトンの「…

川端裕人『風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』

川端裕人 『風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』 集英社文庫 川端裕人の『風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』を読了しました。『銀河のワールドカップ』の前日譚というべき作品なのですが、タイトルから予想されるよりも、…

吉村達也『年下の男』

吉村達也 『年下の男』 集英社文庫 吉村達也の『年下の男』を読了しました。物語の展開としてはストレートであるとも言えると思うのですが、そのことが期待はずれであると感じられてしまう部分もあって、なかなか難しいものです。 【満足度】★★☆☆☆

ラルフ・エリスン『見えない人間』

ラルフ・エリスン 松本昇訳 『見えない人間』 白水Uブックス ラルフ・エリスン(1914-1994)の『見えない人間』を読了しました。「全米図書賞を受賞した黒人文学の金字塔」というと、作品に対するいささかステレオタイプなイメージを生んでしまいそうですが…

有栖川有栖『朱色の研究』

有栖川有栖 『朱色の研究』 角川文庫 有栖川有栖の『朱色の研究』を読了しました。作者のミステリーの中でも個人的に特に印象に残っている作品の一つです。物語の展開に工夫があって飽きることなく読み進められるのですが、後半の捜査パートに至って少しダレ…

吉村達也『感染列島 パンデミック・デイズ』

吉村達也 『感染列島 パンデミック・デイズ』 小学館文庫 吉村達也の『感染列島 パンデミック・デイズ』を読了しました。未曾有のパンデミックを体験することとなった現在から見るといささか示唆的なテーマが取り扱われていますが、本書が発表されたのは今か…

赤川次郎『三毛猫ホームズの歌劇場』

赤川次郎 『三毛猫ホームズの歌劇場』 角川文庫 赤川次郎の『三毛猫ホームズの歌劇場』を読了しました。ヨーロッパを舞台に展開されるシリーズ長編作品の一作で、本書の舞台になっているのはオーストリアのウィーンです。本格ミステリーへのこだわりの片鱗の…

島田荘司『高山殺人行1/2の女』

島田荘司 『高山殺人行1/2の女』 光文社文庫 島田荘司の『高山殺人行1/2の女』を読了しました。ノンシリーズの作品で読み落としていた作品の一つです。島田氏の多くの著作に触れた現在の視点で読んでみると、たとえば『星籠の海』のプロットの一部にも見られ…

早坂吝『○○○○○○○○殺人事件』

早坂吝 『○○○○○○○○殺人事件』 講談社文庫 早坂吝の『○○○○○○○○殺人事件』を読了しました。第50回メフィスト賞受賞作である本書は、私としては珍しく、ノベルス版が刊行された当時に読んでいたのですが、今回は文庫版での再読となります。細かい記憶はないので…

斜線堂有紀『キネマ探偵カレイドミステリー~再演奇縁のアンコール~』

斜線堂有紀 『キネマ探偵カレイドミステリー~再演奇縁のアンコール~』 メディアワークス文庫 斜線堂有紀の『キネマ探偵カレイドミステリー~再演奇縁のアンコール~』を読了しました。作者の小説を読むのはシリーズ二作目である本書で二冊目となるのですが…

我孫子武丸『人形は遠足で推理する』

我孫子武丸 『人形は遠足で推理する』 講談社文庫 我孫子武丸の『人形は遠足で推理する』を読了しました。バスジャックの人質として取られた安楽椅子探偵が事件を解決するという趣向の作品なのですが、同種の作例はあるのでしょうか。ミステリーの部分でもう…

ウィリアム・シェイクスピア『ヘンリー六世 第一部』

ウィリアム・シェイクスピア 小田島雄志訳 『ヘンリー六世 第一部』 白水Uブックス ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)の『ヘンリー六世 第一部』を読了しました。「第一部」とありますが、本書の解説によれば、「第二部」や「第三部」よりも前に書か…

宗田理『復讐クラブは大にぎわい』

宗田理 『復讐クラブは大にぎわい』 角川文庫 宗田理の『復讐クラブは大にぎわい』を読了しました。長篇作品でありながら、連作短編集といった趣のある構成が取られていますが、その試みはそれほどうまくいっているようには思えません。とはいえ、ある種のサ…

歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』

歌野晶午 『葉桜の季節に君を想うということ』 文春文庫 歌野晶午の『葉桜の季節に君を想うということ』を読了しました。今から20年前に発表されて話題をさらった作品で、その種明かしを知った上であらためて読み返してみると、またいろいろと発見させられる…

宮部みゆき『我らが隣人の犯罪』

宮部みゆき 『我らが隣人の犯罪』 文春文庫 宮部みゆきの『我らが隣人の犯罪』を読了しました。作者のデビュー作品である表題作を含む五編が収録された短編集です。いずれも出色の出来栄えといえるのですが、特に「サボテンの花」については、短い紙数の中で…

吉村達也『「長崎の鐘」殺人事件』

吉村達也 『「長崎の鐘」殺人事件』 徳間文庫 吉村達也の『「長崎の鐘」殺人事件』を読了しました。ミステリーとしては、密室を巡るひとつの謎を巡ってあれこれと考察が繰り広げられる部分に面白みがあるのだと思いますが、本書においては「隠れキリシタン」…

村上春樹・大橋歩『村上ラヂオ』

村上春樹・大橋歩 『村上ラヂオ』 新潮文庫 村上春樹・大橋歩の『村上ラヂオ』を読了しました。『anan』に連載されていた作品とのことですが、いつもの村上節というか、良くも悪くも変わらない彼のエッセイを楽しむことができます。 【満足度】★★★☆☆