文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

J・アップダイク『さようならウサギ』

J・アップダイク 井上謙治訳 『さようならウサギ』 新潮社 J・アップダイク(1932-2009)の『さようならウサギ』を読了しました。「ウサギ」ことハリー・アングストロームの人生を綴った大河小説の掉尾を飾る作品です。作者自身が(途中から「メガノベル」と…

島田荘司『羽衣伝説の記憶』

島田荘司 『羽衣伝説の記憶』 光文社文庫 島田荘司の『羽衣伝説の記憶』を読了しました。一冊のミステリー作品として楽しむこともできるのですが、それよりは主人公である吉敷竹史とその元妻である加納通子を巡る一連の大河ドラマのひとつの断片として捉える…

吉村達也『Kの悲劇』

吉村達也 『Kの悲劇』 徳間文庫 吉村達也の『Kの悲劇』を読了しました。作者のデビュー作であり、ケネディ大統領暗殺という世界史に残る事件をモチーフにした国際謀略ミステリーと謳われる作品です。主要登場人物の造形に何とも納得しがたい部分があって、す…

歌野晶午『ガラス張りの誘拐』

歌野晶午 『ガラス張りの誘拐』 角川文庫 歌野晶午の『ガラス張りの誘拐』を読了しました。かつて読んだことのある作品であったか、あるいは初読なのか、それすら定かではないままに読み進めていました。面白く読むことはできましたが、おそらく数年後にはま…

宗田理『ぼくらのデスマッチ 殺人狂がやって来た』

宗田理 『ぼくらのデスマッチ 殺人狂がやって来た』 角川文庫 宗田理の『ぼくらのデスマッチ 殺人狂がやって来た』を読了しました。「ぼくら」シリーズ第四作目にあたる作品で、何となくシリーズの作風が固まってきたのも本作くらいからのような気がします。…

法月綸太郎『密閉教室』

法月綸太郎 『密閉教室』 講談社文庫 法月綸太郎の『密閉教室』を読了しました。作者のデビュー作であり、若書きの印象も否めない作品ではあるのですが、それゆえに魅力を持ったミステリー作品です。作者自身が意識している以上にその若さの部分が前面に出て…

綾辻行人『Another エピソードS』

綾辻行人 『Another エピソードS』 角川文庫 綾辻行人の『Another エピソードS』を読了しました。前作の『Another』に引き続いての読書で、これで最近文庫化されたシリーズ最新作を読む準備が整いました。本作も小技の効いた作品で十分に楽しむことができま…

綾辻行人『Another』

綾辻行人 『Another』 角川文庫 綾辻行人の『Another』を読了しました。ハードカバーが刊行された当時に読んだ作品ではあるのですが、その時は(おそらく当時の外的な環境のせいだと思いますが)あまり読書に集中できなかった記憶があって、ストーリー展開は…

宮部みゆき『龍は眠る』

宮部みゆき 『龍は眠る』 新潮文庫 宮部みゆきの『龍は眠る』を読了しました。印象的な嵐のシーンから始まって、その後も読者の興味を惹きながら複合的に展開していくプロットと、作者らしい人物造形が光る適度にクセのある登場人物たちの間で交わされる会話…

吉村達也『家族会議』

吉村達也 『家族会議』 集英社文庫 吉村達也の『家族会議』を読了しました。いくつかのモチーフが混ざり合った作品で、それぞれが完全には消化されないままに、物語は唐突なエンディングを迎えます。作者の確信犯だとは思うのですが、小説としてこれはいささ…

有栖川有栖『ブラジル蝶の謎』

有栖川有栖 『ブラジル蝶の謎』 講談社文庫 有栖川有栖の『ブラジル蝶の謎』を読了しました。本書を作者の最高傑作であると述べる読者はおそらく少ないのではないかと思いますが、印象に残るいくつかの短編が収録された作品集です。 【満足度】★★★☆☆

島田荘司『確率2/2の死』

島田荘司 『確率2/2の死』 光文社文庫 島田荘司の『確率2/2の死』を読了しました。作者の作品はかなり読んできているのですが、本書はずっと読まないままでいて、今回が初めての読書となりました。作者の他の作品に感動させられ、またあるときには失望させら…

吉村達也『しあわせな結婚』

吉村達也 『しあわせな結婚』 集英社文庫 吉村達也の『しあわせな結婚』を読了しました。この時期の作者の作風にも少しずつ慣れてきたような気がしますが、ほとんど没入することもなく淡々と読み進めるだけの読書になっているような気がします。もし発表当時…

宮部みゆき『レベル7』

宮部みゆき 『レベル7』 新潮文庫 宮部みゆきの『レベル7』を読了しました。作者の小説は当たり外れが少なくてどれも大変面白いのですが、特に初期に発表された作品はどれも傑作ばかりだと思います。久し振りに読み返してみた本書もその例外ではなく、初読…

石持浅海『殺し屋、やってます。』

石持浅海 『殺し屋、やってます。』 文春文庫 石持浅海の『殺し屋、やってます。』を読了しました。作者の小説は登場人物にまったく感情移入できないことが多いため、読み続けているといささか辛い気持ちになってしまうのですが、たまに読む分には大丈夫です…

宗田理『誘拐ツアー』

宗田理 『誘拐ツアー』 角川文庫 宗田理の『誘拐ツアー』を読了しました。子どもの頃に読んだときはもう少し楽しめたような気がするのですが、今回読み返してみると少し散漫な印象を受けてしまう作品でした。本編よりも解説で書かれた作者の経歴の方が気にな…

麻耶雄嵩『貴族探偵』

麻耶雄嵩 『貴族探偵』 集英社文庫 麻耶雄嵩の『貴族探偵』を読了しました。ドラマ化された作品の方は見ていないのですが、ハードカバー刊行時に読んで感心させられたのが本書に収録されている「こうもり」です。思わず直ぐに読み返してしまったことをよく覚…

吉村達也『スイッチ』

吉村達也 『スイッチ』 角川ホラー文庫 吉村達也の『スイッチ』を読了しました。正統派のホラー小説ですが、作者らしい捻りがうまく決まりきらないままに盛り込まれていて、それも作者の計算どおりのようにも思えますが、いささかバランスの悪さが目立つ作品…

有栖川有栖『マジックミラー』

有栖川有栖 『マジックミラー』 講談社文庫 有栖川有栖の『マジックミラー』を読了しました。作者としては珍しいノンシリーズ作品になりますが、作者らしい端正なというか、正統派のアリバイトリックを盛り込んだミステリー作品です。しっかりと手間隙がかけ…

吉村達也『創刊号殺人事件』

吉村達也 『創刊号殺人事件』 角川文庫 吉村達也の『創刊号殺人事件』を読了しました。作者らしさを感じ取ることのできる小説ではあるのですが、いかんせん荒削りな部分が目に付いてしまいます。作者が知悉した業界の裏側を描いた一種のお仕事小説として読む…

マイクル・コナリー『鬼火』

マイクル・コナリー 古沢嘉通訳 『鬼火』 講談社文庫 マイクル・コナリーの『鬼火』を読了しました。最近のハリー・ボッシュシリーズは、読み終わった後にプロットを思い出そうとしても、まったく思い出すことができないようになってしまったのですが、それ…

森博嗣『今はもうない』

森博嗣 『今はもうない』 講談社文庫 森博嗣の『今はもうない』を読了しました。かなり期間を置いての再読となりましたが、物語全体に仕掛けられていることについては覚えがあったものの、作品のミステリーとしての出来自体についてはまったくもって忘れてし…