文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ポール・オースター『サンセット・パーク』

ポール・オースター 柴田元幸

『サンセット・パーク』 新潮社

 

ポール・オースター(1947-)の『サンセット・パーク』を読了しました。原著の出版は2010年のことで、物語の舞台はリーマンショックの起こった2008年とされています。過去の記憶から家族と離れてフロリダで暮らすマイルズは、ある出来事をきっかけとしてニュー・ヨークに戻ってくることになるのですが、そのマイルズが転がり込むことになるのがブルックリンのサンセット・パークにある廃屋です。あくまで物語の軸はマイルズに置かれていますが、サンセット・パークにある廃屋に不法居住する四人の若者の姿がそれぞれの視点により描かれるところが、これまでのオースターの作品にはあまり見られることのなかった特徴となっています。

 

基本的にリアリズムの小説ではあるのですが、そのリアリズムが(読者である私にとって)どこか不思議なものに感じられてしまうところが、この作品の何とも現代的なところであるという気がしました。物事の成り行きからして必然的であるはずのラストシーンが、どこか唐突で不条理なものに思われてしまうのが面白いところです。

 

【満足度】★★★☆☆