文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

フィリップ・ロス『背信の日々』

フィリップ・ロス 宮本陽吉訳

背信の日々』 集英社

 

フィリップ・ロス(1933-2018)の『背信の日々』を読了しました。本書は作家であるネイサン・ザッカーマンを主人公(といってよいのか分かりませんが)とする作品群のひとつで、原題は“The Counterlife”です。英語の辞書を引くと“a life other than the one actually lived.”と説明されていますが、ありうべきもう一つの人生といったところでしょうか。本書ではネイサンの弟ヘンリーのありうべき二つの人生が章を変えながら描かれていて、そこにはアメリカという国で生きるユダヤ人の二律背反が透けて見えます。

 

同じユダヤ系の作家であるポール・オースターが(ほとんど)そうした来歴を感じさせない作風であるのに対して、ロスの著した本作はユダヤ人であるということを強く意識した作品です。

 

【満足度】★★★★☆