ジョン・アーヴィング 斎藤数衛訳
『158ポンドの結婚』 新潮文庫
ジョン・アーヴィングの本を初めて読んだのは大学一回生のときで、それは彼の最初の長編である『熊を放つ』だったと記憶しています。冬の雪の寒さに耐えきれずに下宿を出て、大学図書館の二階でひたすらその本を読んでいたことが、昨日のことのように思い出されます。
ジョン・アーヴィングの長編で読み逃してたのが、本書『158ポンドの結婚』なのですが、ずっと品切重版未定となっていたものをこのたび古本屋で見つけて購入した次第です。夫婦交換によって生まれた、奇妙な四角関係がユーモラスかつグロテスクに描かれます。時系列を巧みに歪ませたプロットで、アーヴィングらしい猥雑なストーリーが展開されるのですが、読み終えたときにどこかシンとした気持ちになるのも、いつもの読後感でした。
アーヴィングらしい「過剰さ」は少し抑え気味ではありますが、家族とは一体何なのか、夫婦関係とはいかなるものなのか、他人を理解するとはどういうことなのか、考えさせられる読書体験でした。
【満足度】★★★☆☆