『その名にちなんで』 新潮社
ジュンパ・ラヒリ(1967-)の『その名にちなんで』を読了しました。『停電の夜に』(原題は『病気の通訳』)でデビューしたジュンパ・ラヒリの長編第一作にあたるのが本書です。
本書の主人公はアメリカに暮らすインド系移民二世で、名前はゴーゴリ・ガングリー。かつて彼の父親が列車事故に遭遇したときに自分の命を助けてくれた書物の作者にちなんでつけられた名前です。思春期にさしかかったゴーゴリはやがてこの名前を嫌ってニキルと改名するのですが、その後もゴーゴリというかつての名前と不可分であった自分の存在を――インド系移民としての自分のアイデンティティを思い知らされるかのように――折に触れて思い返すことになります。
本書の中でも登場する 「ABCD」という言葉は、American Born Confused Desi の略語で、アメリカで生まれた(混乱した)インド系アメリカ人のことを表しているとのこと。その混乱を真っ直ぐに描いた本書は何ともよくできた小説で、いささか出来すぎているきらいもあるのですが、両親ともにインド・カルカッタ出身のジュンパ・ラヒリにとって、いつかは書かなければならない作品だったのでしょうか。
久しぶりの二連休。
【満足度】★★★☆☆