文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ジョージ・ソーンダーズ『十二月の十日』

ジョージ・ソーンダーズ 岸本佐知子

『十二月の十日』 河出書房新社

 

ジョージ・ソーンダーズ(1958-)の『十二月の十日』を読了しました。2017年のブッカー賞受賞作である『リンカーンとさまよえる霊魂たち』に続く、ソーンダーズ二冊目の読書となります。『リンカーンとさまよえる霊魂たち』が長編作品であったのに対して、本書は短編集です。何となく消化不良気味だった前回の読書でしたが、今回はどのような感じになるか、期待しすぎることなく読み進めました。

 

訳者あとがきによるとソーンダーズは「作家志望の若者にもっとも文体を真似される作家」らしいのですが、たしかに翻訳でも伝わる独特の文体にまずは目を引かれます。霊魂たちの会話からなる前作とは異なるこの文体が、独特のリズムとユーモアを生みながら、社会の中心ではなくマージナルな部分でもがいている本書の登場人物たちの姿に不思議とマッチしています。戦地からの帰還兵の姿を描く「ホーム」が印象に残りました。まだ私はこの作家の真髄というものに触れている気がしないのですが。

 

【満足度】★★★☆☆