文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ジェイムズ・ディッキー『救い出される』

ジェイムズ・ディッキー 酒本雅之訳

『救い出される』 新潮文庫

 

ジェイムズ・ディッキー(1923-1997)の『救い出される』を読了しました。村上柴田翻訳堂の企画で復刊された一冊です。原題は“Deliverance”で1971年に日本で翻訳出版されたときには『わが心の川』という邦題だったようですが、今回復刊されるにあたって村上春樹氏の進言によって『救い出される』という訳に変更されたようです。作者であるディッキーは詩人で、本書が初めて書かれた小説作品とのこと。

 

渓流をカヌーで下る計画を立てて山奥に分け入った四人の男性が、現地に住む山男たちからの不意の暴力によって窮地に陥りながら、そこからの脱出を試みるというストーリー。冒険小説、サスペンス小説といった枕詞が似合いそうな筋立てではあるのですが、緊密な文体と主人公の覚醒によって、単にリーダブルであるだけではなくて一種独特な力を獲得している作品でした。復刊されてこうして気軽に手に取ることができるのは、喜ばしいことだと思います。

 

【満足度】★★★☆☆