滝口悠生の『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』を読了しました。滝口氏が芥川賞を受賞する前年に発表した作品で、著作としては三冊目にあたるのが本書です。まさに「体験」という他はない「ジミ・ヘン」の音楽をモチーフにして、若者の青春の日々と当てのない旅の様子、そしてそれらを回想する現在の様子とが、時制を変えながらフラッシュバックのように描かれていきます。
くっきりした情景が目に浮かぶ冒頭の場面から、円環的に回帰する最後の場面まで、鮮やかな印象が残る作品です。著者の他の作品も読んでみたいと感じさせられました。
【満足度】★★★★☆