『紙の動物園』 ハヤカワ文庫
ケン・リュウ(1976-)の『紙の動物園』を読了しました。中国出身でアメリカに移住し、弁護士やプログラマーとしても活動しながら2002年に作家デビュー。2011年に発表した本書の表題作である「紙の動物園」がヒューゴー賞・ネビュラ賞・世界幻想文学大賞に選ばれています。本書は古沢嘉通さん(私にとってはマイクル・コナリー作品の翻訳者という認識なのですが)が編集・翻訳した日本オリジナルの作品集です。
SFとオリエンタリズム(中国のみならず日本も含む)と詩情がうまいこと融合した作風で、人気が出るのもよく解る気がします。そのオリエンタリズムの部分が日本人である私にとってはあまり特異なものには感じられないのですが、それを抜きにしても楽しく読むことができます。表題作である「紙の動物園」はSFというよりもマジックリアリズムふうの作品で、母の子への愛情が感動的に描かれています。
何となく物足りない部分も残るのですが、それが何に起因するのかはよく解りません。もう一冊の作品集『もののあわれ』を読んでみてから判断しようと思います。
【満足度】★★★☆☆