文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

本谷有希子『異類婚姻譚』

本谷有希子

異類婚姻譚』 講談社

 

本谷有希子の『異類婚姻譚』を読了しました。第154回芥川賞受賞作である本書は「結婚」、そして「夫婦」というものに潜む違和感を題材としています。「夫婦は互いに似てくる」という、比較的多くの文脈においては美談のように語られる定説の中に、圧倒的にグロテスクなものが隠れているということを暴き出す筆致の見事さには感心させられてしまいます。

 

甘えの中で自我の境界線が崩壊して緩やかに溶け出していくというイメージは、カルト的な人気を誇った某アニメーション映画のラストシーンを彷彿とさせるのですが、その描かれ方の違いというものが、時代の変遷を感じさせるというか、面白いものだと思わされます。

 

【満足度】★★★★☆