文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

フアン・ルルフォ『ペドロ・パラモ』

フアン・ルルフォ 杉山晃増田義郎

『ペドロ・パラモ』 岩波文庫

 

フアン・ルルフォ(1917-1986)の『ペドロ・パラモ』を読了しました。メキシコの作家であるルルフォが生涯で著した本はたったの二冊とのことで(脚本などは書いていたようなのですが)、短編集『燃える平原』と本書『ペドロ・パラモ』がそれに当たります。

 

父親であるペドロ・パラモを探して、コマラの町を訪れたフアン・プレシアドを語り手として紡がれる物語――というよりも声の集積が本書の中核をなしています。余計なものを削ぎ落とした簡潔な文体と、力強い語りの存在感が印象に残ります。何となく思い出させたのは『悪童日記』をはじめとする三部作を書いたアゴタ・クリストフが、ルルフォと同じように寡作の作家であったこと。身体性に訴えかける圧倒的な文体や視点を身に付けてしまった作家は、もはや「このようにしか書けない」という境地に至ってしまうのかもしれません。

 

【満足度】★★★★☆