文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

J・アップダイク『日曜日だけの一カ月』

J・アップダイク 井上謙治

『日曜日だけの一カ月』 新潮社

 

J・アップダイク(1932-2009)の『日曜日だけの一カ月』を読了しました。原題は“A Month of Sundays”で発表されたのは1975年のこと、ちょうど中期の作品といってよいのでしょうか。牧師の姦通というテーマを扱った本書ですが、ホーソーンの『緋文字』のような重苦しさとは一線を画していて、彼一流の洒脱な文章術で現代的な神学論・宗教論が展開されていく点が本書の読みどころとなっています。

 

31の章立てからなる本書は、1章が1ヶ月の1日と見立てられて、日曜日にあたる第6章・13章・20章・27章では語り手であるトマス・マーシュフィールド牧師による説教が行われます。この説教がめっぽう面白いわけなのですが、本書のタイトルが表しているように、それ以外の曜日(章)においてもマーシュフィールドによる現代的な性の説き明かしは続けられていて、アップダイクらしいそれでいてユニークな作品になっていると感じられました。

 

【満足度】★★★★☆