文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

リチャード・パワーズ『黄金虫変奏曲』

リチャード・パワーズ 森慎一郎・若島正

『黄金虫変奏曲』 みすず書房

 

リチャード・パワーズ(1957-)の『黄金虫変奏曲』を読了しました。1985年に『舞踏会へ向かう三人の農夫』でデビューしたパワーズが、1991年に発表した第三作目にあたる小説が本書です。DNAの二重螺旋に秘められた暗号解読を巡る冒険と、バッハによる二段の手鍵盤のチェンバロのための変奏曲、そして二組の男女の物語が重ね合わされた長大な作品です。いささか長大すぎて、読書の途中で私の意識がかなりダレてしまったことは否めません。図書館のレファレンスコーナーでのエピソードなど、作者の博学をエレガントに小説に落とし込むための絶好の手法だと思うのですが。

 

ピンチョンの小説が持つ重厚長大さの通奏低音としてブルースが響いているのだとすれば、パワーズの小説にはクラシックが流れているようで、私自身が少し肌が合わないと感じてしまうのはそんなところに理由があるのかもしれません。この良く出来た作品を余すことなく理解したときに得られる喜びというものがあるのだと思いますが、なかなかそこに至れないことに忸怩たる思いがあります。

 

【満足度】★★★☆☆