文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

トルストイ『人生論』

トルストイ 中村融

『人生論』 岩波文庫

 

トルストイ(1828-1910)の『人生論』を読了しました。本書は、トルストイがある出版社の記者をしていたという女性から送られてきた手紙に返書するかたちで書き始められたものだといいます。1886年に書かれたということで、いわゆるトルストイの「回心」以後の作品になります。

 

論文調で書かれているからなのか、小説作品よりは説教臭さが薄まっているような気がしたのですが、「理性的意識」を大上段に据えた物言いに反発を覚える人も多いのだろうなというのが率直な印象です。とはいえ、人間の知識が誤った方向へと向かってしまう原因を分析するトルストイの論述は、ひとつの知識論を展開していると言えないこともなく、そうした意味で興味深く読むことができました。その分析に感心したかどうかは、それとは別の話になるのですが。

 

【満足度】★★★☆☆