文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

フローベール『感情教育』

フローベール 生島遼一

感情教育』 岩波文庫

 

フローベール(1821-1880)の『感情教育』を読了しました。本書は『ボヴァリー夫人』、『サランボー』に続くフローベールにとって三作目となる長編小説。二月革命(1848)前後のパリを舞台にした青年フレデリックの恋と友情の物語が描かれます。

 

バルザックの『ペール・ゴリオ』(1835)に登場する野心的青年ラスティニャックは、19世紀のフランス文学に特徴的なひとつの類型的人物だと思うのですが、本書の主人公フレデリックにもその影響が見られます。モーパッサンの『ベラミ』に登場するデュロワの上昇主義とは異なり、フレデリックはひたすらにアルノー夫人への一途な愛情を持ち続けて、人間的な奮闘を見せてくれるのですが、物語の最後に友人のデローリエと「あの頃がいちばんよかった」と回想する場面は感動的です。

 

フローベールが描いた青春小説。なぜだかまた読み返したくなるような気分になる作品でした。

 

【満足度】★★★★☆