文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

J・L・ボルヘス『語るボルヘス 書物・不死性・時間ほか』

J・L・ボルヘス 木村榮一

『語るボルヘス 書物・不死性・時間ほか』 岩波文庫

 

J・L・ボルヘス(1899-1986)の『語るボルヘス 書物・不死性・時間ほか』を読了しました。本書はアルゼンチンを代表する作家ボルヘスが1978年にブエノスアイレスの大学で行われた連続講演を収めた講演集です。講演のテーマは五つで「書物」、「不死性」、「エマヌエル・スヴェーデンボリ」、「探偵小説」、そして「時間」です。

 

ボルヘスと探偵小説という組み合わせも興味を引かれるのですが、読んでいて目に付いたのはボルヘスの「記憶」を巡る物語とでもいうべきもの。講演に際して全く準備をしていないということはないのでしょうが、彼が語る文学や思想の引用や解説にはところどころ「記憶違いでは?」と感じさせられてしまうものがあります。もちろんそうであっても困るわけですが「記憶の人、フネス」のようにはいかないようです。とはいえ、その力技とでもいうべき語りには、オクタビオ・パスの詩論を読んだときと同様に、有無を言わさず聞き入らせてしまうところがあるのでした。

 

【満足度】★★★☆☆