文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ナボコフ『偉業』

ナボコフ 貝澤哉

『偉業』 光文社古典新訳文庫

 

ナボコフ(1899-1977)の『偉業』を読了しました。『偉業』はナボコフが1932年にロシア語で発表したいわば初期の長編作品にあたりますが、後年1972年に“Glory(栄光)”というタイトルで、ナボコフの息子ドミトリイによって英訳されています。本書はロシア語原典からの翻訳となります。

 

少年マルティンが両親の離婚によって、そして作中では明確には語られることのない政治・歴史的背景によって、各地を移動しながら過ごす青春時代と、ケンブリッジでの大学生活が牧歌的な筆致で描かれています。そして、家族や友人との微妙な関係性の中で、腰の定まらない彷徨の果てに、マルティンは彼が夢想する「偉業」への旅立ちへと姿を消していくのですが、その結末は明確に語られないままに物語は終わりを迎えます。訳者による詳細な解説が読書の手引きとなります。

 

【満足度】★★★☆☆