文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

シュトルム『みずうみ 他四篇』

シュトルム 関泰祐訳

『みずうみ 他四篇』 岩波文庫

 

シュトルム(1817-1888)の『みずうみ 他四篇』を読了しました。本書には作家の処女作であるという短編作品「マルテと彼女の時計」、第二作「広間にて」、そして第三作「みずうみ」といった初期の短編作品が収録されています。小説としての視点や語り口にまだぎこちなさが残る「マルテと彼女の時計」と比べても、表題作である「みずうみ」で語られる老研究者の若き日の回想とそこから醸し出される苦さには筆の技巧の深まりが感じられます。そしてそれと同時に、決して苦さだけではなく小さく輝く光をそこに立ち上げていく力にも好もしさを覚えます。

 

上で挙げた三作のほかに「林檎の熟するとき」、「遅咲きの薔薇」が収録されています。

 

【満足度】★★★☆☆