文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

2023-11-04から1日間の記事一覧

トルストイ『幼年時代』

トルストイ 藤沼貴訳 『幼年時代』 岩波文庫 トルストイ(1828-1910)の『幼年時代』を読了しました。トルストイが23歳の若さのときに発表した処女小説で、ツルゲーネフはこの作品を激賞したとのこと。繊細に描かれた10歳の少年の内的生活は、自伝的作品とし…

村上春樹『海辺のカフカ』

村上春樹 『海辺のカフカ』 新潮文庫 村上春樹の『海辺のカフカ』を読了しました。随分と久し振りの読み返すことになりましたが、物語の展開など比較的細部に至るまで記憶に残っていて、今回は長い物語の全体を成す骨格の部分に注意しながら読み進めていく読…

貴志祐介『コロッサスの鉤爪』

貴志祐介 『コロッサスの鉤爪』 角川文庫 貴志祐介の『コロッサスの鉤爪』を読了しました。もともとは『ミステリークロック』と合わせて一冊の短編集として上梓されていたものが、文庫化にあたって分冊されたとのことですが、昨今の書籍の値段の高騰具合も踏…

村上春樹『ランゲルハンス島の午後』

村上春樹・安西水丸 『ランゲルハンス島の午後』 新潮文庫 村上春樹・安西水丸の『ランゲルハンス島の午後』を読了しました。いつもの村上節が炸裂する短いエッセイ集なのですが、そこに付けられた安西氏の絵が何ともいえない味わいを見せていて、今回の読書…

我孫子武丸『人形は眠れない』

我孫子武丸 『人形は眠れない』 講談社文庫 我孫子武丸の『人形は眠れない』を読了しました。シリーズ三作目に当たる本書は「短編の面白さを兼ね備えた長編」を目指したものであると作者自身によって述べられているのですが、その狙い自体が面白く、いわゆる…

舞城王太郎『されど私の可愛い檸檬』

舞城王太郎 『されど私の可愛い檸檬』 講談社文庫 舞城王太郎の『されど私の可愛い檸檬』を読了しました。三篇の作品が収録された短編集で「理不尽で面倒だけれども愛するしかない戦慄含みの家族小説集」という裏表紙カバーに書かれた作品紹介が的を射ていて…

斜線堂有紀『キネマ探偵カレイドミステリー~輪転不変のフォールアウト~』

斜線堂有紀 『キネマ探偵カレイドミステリー~輪転不変のフォールアウト~』 メディアワークス文庫 斜線堂有紀の『キネマ探偵カレイドミステリー~輪転不変のフォールアウト~』を読了しました。シリーズの完結篇というべき作品で、フィクションというものに…

村上春樹・安西水丸『日出る国の工場』

村上春樹・安西水丸 『日出る国の工場』 新潮文庫 村上春樹・安西水丸の『日出る国の工場』を読了しました。工場見学をテーマにしたエッセイ集ですが、取材先の中には一般的な意味では「工場」と呼べないようなもの(結婚式場、農場など)も含まれています。…