文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

2023-12-31から1日間の記事一覧

ル・クレジオ『嵐』

ル・クレジオ 中地義和訳 『嵐』 作品社 ル・クレジオ(1940-)の『嵐』を読了しました。表題作ともなっている「嵐」と「わたしは誰?」という邦題の付された二篇の中編小説が収録されています。前者は作者が深い関心を寄せる国である韓国南部の小島を舞台に…

シェイクスピア『ヴェニスの商人』

シェイクスピア 福田恆存訳 『ヴェニスの商人』 新潮文庫 シェイクスピア(1564-1616)の『ヴェニスの商人』を読了しました。岩波文庫、白水Uブックス、ちくま文庫のそれぞれの訳で読んだ作品で、言わずと知れた喜劇の傑作なのですが、今回の読書で印象に残…

早坂吝『アリス・ザ・ワンダーキラー 少女探偵殺人事件』

早坂吝 『アリス・ザ・ワンダーキラー 少女探偵殺人事件』 光文社文庫 早坂吝の『アリス・ザ・ワンダーキラー 少女探偵殺人事件』を読了しました。ルイス・キャロルの不思議の国のアリスをモチーフにしたパズルに、作者らしい企みが織り込まれたミステリー作…

須藤古都離『ゴリラ裁判の日』

須藤古都離 『ゴリラ裁判の日』 講談社 須藤古都離の『ゴリラ裁判の日』を読了しました。第64回メフィスト賞受賞作ですが、新本格ミステリーの文脈で読むといささか肩透かしを食ってしまうと思います。よく下調べの効いたゴリラの描写に加えて、裁判の判決を…

京極夏彦『姑獲鳥の夏』

京極夏彦 『姑獲鳥の夏』 講談社文庫 京極夏彦の『姑獲鳥の夏』を読了しました。ミステリーとしてというよりは、その設定やキャラクターにおいて人気が出た作品なのだと思うのですが、ミステリーの文脈ではなかなかに大胆なことが試みられていて、何とも複雑…

デイヴィッド・マークソン『ウィトゲンシュタインの愛人』

デイヴィッド・マークソン 木原善彦訳 『ウィトゲンシュタインの愛人』 国書刊行会 デイヴィッド・マークソン(1927-2010)の『ウィトゲンシュタインの愛人』を読了しました。本書の帯にある「煽り文」には〈アメリカ実験小説の最高到達点〉と書かれていて、…