文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

デイヴィッド・マークソン『ウィトゲンシュタインの愛人』

デイヴィッド・マークソン 木原善彦

ウィトゲンシュタインの愛人』 国書刊行会

 

デイヴィッド・マークソン(1927-2010)の『ウィトゲンシュタインの愛人』を読了しました。本書の帯にある「煽り文」には〈アメリカ実験小説の最高到達点〉と書かれていて、本書が果たして「最高到達点」なのかどうかについては私が評することはできませんが、本書がいわゆる実験小説という括りで語られるべきものであることは確かなようです。

 

地上に最後に残った(と思しき)女性が、古典から現代に至るまでの文学や芸術についてあたかも無軌道な仕方でタイプライターに綴っていくという、ただそれだけの小説ではあるのですが、その饒舌と語り得ないことについては沈黙しなければならないと述べたウィトゲンシュタイン(タイトルに掲げられてはいますが、本文中での言及はなかったように思います)の影とが鮮やかなコントラストを描いています。不思議な共感を覚えさせられる小説です。

 

【満足度】★★★★☆