T・S・エリオット 岩崎宗治訳
『荒地』 岩波文庫
T・S・エリオット(1888-1965)の『荒地』を読了しました。しかし、これを読了といってもよいのかどうか、いささか疑問が残る状況ではあります。正直なところ、一度読んだだけでは、まるで何が書いてあるのか理解できないという状況です。「四月は最も残酷な月」、ここまでは良いのですが…
「荒地(Waste Land)」とは訳者の解説によれば、中世ヨーロッパのアーサー王物語の中の「聖杯伝説」における漁夫王の支配する荒れ果てた国土のこと。この聖杯伝説をバックグラウンドとして、死と再生のモチーフを、巧みな引用、比喩、意識の流れの手法を用いて表現しながら、さらにはエリオットが傾倒していたインド哲学の影響もみられるということで、「荒地」は難解として知られる作品になっています。
シンプルに詩文によって喚起されるイメージを追っているだけの読み方が悪いわけではないのでしょうか、引用のコラージュというか、過去の文学の大伽藍というか、それらをミクロにもマクロにも見渡す視点を持ち得ないと、おそらくこの詩を楽しむことはできないのでしょう。いつか私にもそんなときが来るのでしょうか。
【満足度】★★★☆☆