バーナード・マラマッド『アシスタント』
バーナード・マラマッド 酒本雅之訳
『アシスタント』 荒地出版社
バーナード・マラマッド(1914-1986)の『アシスタント』を読了しました。寡作で知られているマラマッドですが、本書は彼が1957年に発表した小説第二作目です。私の手元にある本書は1969年に翻訳出版されたものですが、その帯には「異色作家マラマッドの最高傑作」とあります。マラマッドを「異色作家」と評するのは当時一般的なことだったのでしょうか。その作品からユダヤ人であることの矜持と桎梏とが強く感じられるマラマッドですが、その作風は異色というよりは極めて普遍的なもののようにも思われます。
ブルックリンで食料雑貨店を営むモリス・ボーバーと、そこに「アシスタント」として転がり込むことになるイタリア系のフランク・アルパイン、そしてボーバーの娘であるヘレンを軸にして進む物語は、月並みな表現ではありますが、“生きる”ということの実相をそれぞれの登場人物に固有な信念のもとで私たちに示してくれます。本当のユダヤ人とは「正しいことをする。正直である、善良であるということだ」と語るボーバーの台詞が決して陳腐なものになっていないのは、この小説の持つパワーの故なのだと思います。
【満足度】★★★★☆