アドルノ(1903-1969)の『認識論のメタクリティーク』を読了しました。啓蒙主義を批判するフランクフルト学派の中心人物であるアドルノによるフッサール哲学の批判の書です。「フッサールと現象学的アンチノミーにかんする諸研究」という副題が付けられた本書では、フッサールの哲学に潜む二律背反を暴くことが主眼とされています。
アドルノによって啓蒙的合理性が露呈するアンチノミーとしてやり玉に挙げられているフッサールの現象学ですが、現象学的還元や本質直観といった何かと問題視されることの多いフッサールの道具立てに関するアドルノの理解には一面的な部分があるように思います。とはいえフッサールの超越論的現象学の構想が、とりわけその認識論的な側面において、意義を持つものなのかどうかという点については、私にもいささかの疑問が残るのでした。フッサールというのは本当に評価しづらい思想家だと思います。
【満足度】★★★☆☆