『認識論を社会化する』 名古屋大学出版会
伊勢田哲治の『認識論を社会化する』を読了しました。本書の冒頭では「本書の主要なテーマは科学社会学と認識論のよりよい関係の構築のために何をすべきか考えること、とりわけ社会学的な理論や知見を認識論や科学哲学にどのように生かすことができるか、ということについて考察することである」と述べられています。
この研究分野は「社会認識論」と呼ばれ、本書ではデイヴィッド・ハル、フレデリック・サッピ、アルヴィン・ゴールドマンといった研究者の主張が具体的に分析・検討されていきます。著者によると、ハルとサッピの社会認識論は「記述的」、そしてゴールドマンの社会認識論は「規範的」なものとして特徴づけられます。そして、戦後アメリカ社会学の歴史を概観することによる事例研究を通じて、“実際の”社会学研究の分析において社会認識論の主張がどれだけの射程を持つのかが分析された後、メタ倫理学の知見を応用するかたちで、社会認識論の記述的アプローチと規範的アプローチを調停的に統合する道が提唱されます。
「補償」として収められた「KKテーゼと懐疑主義」も興味深く読むことができました。
【満足度】★★★★☆