『人間の土地』 新潮文庫
サン=テグジュペリ(1900-1944)の『人間の土地』を読了しました。8つの断章からなる作品で、連作短編集というには各篇の構成上の繋がりが薄く、長編作品というにはストーリーラインが定まらない、不思議な構成の小説です。主人公がサハラ砂漠に不時着した後、三日間砂漠を彷徨した後に生還する様が描かれていますが、そういう意味では自伝的作品とも言えるかもしれません。
自然と対峙する英雄的な行為よりも、飛行前の移動中のバスでの情景の方により心を惹かれてしまいます。飛行機による郵便輸送という二十世紀前半におけるごく短い時代を描いた作品が、現代にも通じる普遍的な価値を獲得しているのはなぜなのでしょうか。宮崎駿氏による解説も秀逸です。
【満足度】★★★★☆