文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ジッド『未完の告白』

ジッド 新庄嘉章訳

『未完の告白』 新潮文庫

 

ジッド(1869-1951)の『未完の告白』を読了しました。『女の学校』、『ロベール』と共に三部作を成す作品とされ、原題は本書の訳題とは異なる『ジュヌヴィエーヴ』です。妻、夫、そして娘のそれぞれの視点から捉えられた家族の形を描いた三部作なのですが、娘の視点からなる本書は(訳題が示すとおり)未完のまま公刊されたとのこと。

 

典型的な「思想の小説」という印象の作品で、トーマス・マンを好きな私にとってはとても面白く読むことができたのですが、ナボコフが本書を読んだとすればおそらく高く評価することはなかったのではないか、といったことを思わず考えてしまいます。母と娘の運命と本音が交錯する本書のラストシーンから先にどのような展開が考えられていたのか気になるところなのですが、ジッドが本書を完成させることができなかったという事実についても、さもありなんという感想を持ちました。

 

【満足度】★★★☆☆