文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

J・M・G・ル・クレジオ『調書』

J・M・G・ル・クレジオ 豊崎光一訳

『調書』 新潮社

 

J・M・G・ル・クレジオ(1940-)の『調書』を読了しました。1963年に発表された本書はル・クレジオのデビュー作です。『大洪水』を読んだときにも感じたことですが、若き才能がほとばしる様を見せ付けられるような鮮烈な作品です。主人公であるアダム・ポロによる世界認識・分析の様子を叙述するだけで(そこにはストーリーらしきものはほとんどないのですが)、これほどに詩的で興味深い小説に仕上げてみせる技には本当に感心させられます。

 

物質の多様性、(多くの場合は言語からなる)世界の分節化、それらの交じり合いを楽しみながらも、外形的なプロットはまったく頭に入ってきません。だからこそ、読み直したくなるという側面はあるのだと思いますが。

 

【満足度】★★★★☆