文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

スティーヴン・P・スティッチ『断片化する理性 認識論的プラグマティズム』

ティーヴン・P・スティッチ 薄井尚樹訳

『断片化する理性 認識論的プラグマティズム』 勁草書房

 

ティーヴン・P・スティッチ(1943-)の『断片化する理性 認識論的プラグマティズム』を読了しました。認識論を自然化するというクワインの標榜したプロジェクトは、本書においては「われわれは本当に自分の信念が真かどうかを気にかけているのだろうか」と問われる地点まで至っています。信念の正当化を巡るグッドマン流の試みに散々挫折した後でスティッチがたどり着いた地点は、認識論における多元主義という立場であり、相対主義ではないかという批判に対しては「支離滅裂に陥ることなく認識的相対主義者であることは可能だ」と主張します。1990年に発表された本書は、二十世紀における自然主義的認識論のひとつの到達点であるとも言えるのかもしれません。

 

【満足度】★★★★☆