ラリー・ラウダン『科学と価値 相対主義と実在論を論駁する』
ラリー・ラウダン(1941-)の『科学と価値 相対主義と実在論を論駁する』を読了しました。科学史家・科学哲学者として活躍するラウダンの科学哲学上の主著の翻訳で、原著は1984年に発表されています。「科学者たちの見解はよく対立するにもかかわらず、不一致が解消されて合意が形成されるのはなぜなのか」を主題として、「科学の目的(aim)」についての鋭い考察が展開されます。ちなみに邦訳である本書の副題は「相対主義と実在論を論駁する」となっていますが、原著の副題は“The Aims of Science and Their Role in Scientific Debate”となっていて、本書のテーマとしてはやはり原著の副題の方が内容に即しているのではないかと思います。
クーンのいう「パラダイム」やラカトシュのいう「リサーチプログラム」に代わるものとして、ラウダンが提示する「網状モデル」が、どこまで科学の営みのあるべき描像となっているかを判断することはできませんが、丁寧な論述は大変勉強になりました。
【満足度】★★★★☆