M・バルガス=リョサ 高見英一訳
『パンタレオン大尉と女たち』 新潮社
M・バルガス=リョサ(1936-)の『パンタレオン大尉と女たち』を読了しました。本書は品切れ重版未定が続いていて、なかなか手に取ることができなかったのですが、このたびようやく読むことができました。本書は1973年に『ラ・カテドラルでの対話』の次に発表された長編作品で、本書を紐解くためのキーワードは「ユーモア」ということになるのだと思いますが、その滑稽さが醸し出す平和な気分を裏切る展開が待ち構えています。
何気ない文中で唐突に時制を飛び越えるフラッシュバックの多用は作者にお馴染みの小説作法で、また本書で同様に多用されている断片的な報告文書を継ぎはぎして物語を綴る手法も、本書の主題を描き出すにあたって必要不可欠な要素として効果を発揮していると思います。それはそれで面白く読むことができたのですが、まったくの個人的な意見ではありますが、作者の真骨頂はユーモアではなく他の部分にこそ存在するのではないかというのが本書を読了してみての私の感想でした。
【満足度】★★★☆☆