文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

イアン・マキューアン『愛の続き』

イアン・マキューアン 小山太一

『愛の続き』 新潮文庫

 

イアン・マキューアンの『愛の続き』を読了しました。本書は新潮クレストブックスで出版された後に文庫本になったもので、ブッカー賞を受賞した『アムステルダム』に続いて新潮文庫に収められています。しかし、原書の出版は『アムステルダム』より本書の方が早く、本書もまたブッカー賞候補となっているようです。

 

悲劇的な気球の墜落事故に居合わせた男から、宗教的な求愛を受けることになる主人公のジョー。いわゆるストーカーの物語なのですが、その対象が同性であることと、また求愛を受けることになる主人公のジョー自身が静かに狂気に沈んでいく様が描かれているところが、マキューアンの小説に仕込まれた意図的な「グロテスクさ」を感じさせます。面白く読むことはできたのですが、相変わらずの距離感を感じさせられてしまう作家です。

 

【満足度】★★★☆☆