デュマ・フィス 西永良成訳
『椿姫』 角川文庫
アレクサンドル・デュマ・フィス(1824-1895)の『椿姫』を読了しました。『モンテ・クリスト伯』や『三銃士』の著者として知られるアレクサンドル・デュマの息子だから「デュマ・フィス」。お父さんの方は「デュマ・ペール」と呼ばれるそうです。デュマ・フィスの(ほぼ唯一の)代表作が本書『椿姫』で、そのタイトルは多くの人がどこかで目にしたことがあるのではないでしょうか。
パリの社交界を舞台に高級娼婦として人々の注目を集める「椿姫」ことマルグリットと若き青年アルマンとの悲恋の物語が、回想として語られます。その結末が悲劇に終わることを知っている読者は、その悲劇によるカタルシスを迎えるために二人の恋物語を読み進めるわけですが…。本書からおよそ30年後にゾラによって書かれた『ナナ』の猥雑な自然主義と比べると、何ともおとなしい印象を受けます。
マルグリットやアルマンなどの人物造形に心惹かれることもなく、現代の目からはプロットも至って凡庸で、久しぶりにどこを楽しめばよいのかよく解らない読書体験になってしまいました。舞台や映画など、視覚効果を含めて鑑賞されるとまた違った受け取り方になるのでしょうか。
【満足度】★☆☆☆☆