文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ティム・オブライエン『ニュークリア・エイジ』

ティム・オブライエン 村上春樹

『ニュークリア・エイジ』 文春文庫

 

ティム・オブライエン(1946-)の『ニュークリア・エイジ』を読了しました。アメリカの「核の時代」を背景にした青春小説と言ってよいのでしょうか。ベトナム戦争をテーマにした作品群で知られ、日本では村上春樹の翻訳のもとでいくつかの作品が出版されています。本書も(ドストエフスキーと比較しながら)「現代の総合小説」として村上春樹氏が高く評価している作品です。

 

それなりに長い作品なのですが、ユニークな登場人物が次々に現れて、飽きることなく楽しく読ませてもらいました。別の言い方をするとキャラクター小説的な印象も感じられてしまうのですが、背景にあるのは核や戦争に関する登場人物たちのオブセッションのようなもので、そうしたものが日本のカルチャーに与えてきた影響も含めて、村上春樹氏の存在を抜きにしては純粋に本書を読むことは難しいのかもしれないと感じさせられました。

 

【満足度】★★★☆☆