文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ドリス・レッシング『破壊者ベンの誕生』

ドリス・レッシング 上田和夫

『破壊者ベンの誕生』 新潮文庫

 

ドリス・レッシング(1919-2013)の『破壊者ベンの誕生』を読了しました。ノーベル賞作家のレッシングですが、日本では入手しやすい翻訳作品が少ないような気がします。いかめしいタイトルを付けられた本書の原題は“The Fifth Child”で、訳者あとがきによると、編集者の意向でこの邦題になったようです。

 

デイヴィッド・ハリエット夫妻の五番目の子どもとして生まれてくるベンは「フリークス」と呼ばれ、この幸福な家庭に破壊をもたらすことになるのですが、この家庭の「幸福さ」の人工的な感じは、ベンの誕生以前に、既にどこかしら不穏な気配を漂わせていたように思います。リアルな描写のようでいて、同時に寓話のような印象も受ける不思議な物語でした。好き嫌いは分かれるところかと思うのですが。

 

【満足度】★★★☆☆